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2022 長崎県政検証結果

2022 長崎県政検証結果の概要

2022 長崎県政
検証結果の概要

検証の方向性

1. 政策課題・事業の検証結果

① 新型コロナ感染対策

感染者数・死亡者数は、国内の都道府県の中では少ない。しかし、その要因は、医療従事者の皆様の奮闘や県民の皆様がワクチン接種や各般の感染対策に励んでいただいたおかげ。県の対策は、長崎知事の思いつき・思い込みによる県民を分断し、バランスを欠いたものが相次いだ。

② リニア中央新幹線事業

「山梨県内駅位置再考」、「駅周辺地域整備」、「シャトルバス路線計画・運行経路」等、事前調査や自治体等の関係者との調整が不十分なまま、 長崎知事の思いつき・思い込みによるバランスを欠いた判断により、他の自治体等を巻き込んで迷走・停滞する事態となった。

③ 教育環境等の充実 (25人学級実現)

25人学級の実現は大変結構。だが中学校まで導入するには長期的かつ安定的な財源が必要。長崎知事が挙げる財源は、富士山登山鉄道構想関連や電気事業関係の収益など先行き不透明なものばかりで堅実な財源とは言えず、今後が危ぶまれる

④ 県民共有財産のブラッシュアップ

県民共有財産の有効活用・県民還元は県政運営において重要なテーマ。だが、「県有地問題」、「弁護士費用問題」、「地下水・ミネラ ルウォーター税」、「ふるさと納税」など、長崎知事は、政治的・恣意的に判断・対応し、収入増・支出減という方向性がない。

⑤ 富士山登山鉄道

地元の富士北嶺首長や経済界の納得を得られておらず、富士山LRT事業化検討委員会の開催状況も不明である。厳冬期の自然災害、乗客乗員の安全確保など検討すべき課題が山積している。長崎知事は、特に地元への説明・理解を求める姿勢に欠けており、この事業を進めようとする熱意も感じられない。

⑥ 人口減対策・男女共同参画社会実現

県の出生数減少率が非常に深刻。県外への若い女性の流出が主な原因。しかし、県は「ぴゅあ富士」「ぴゅあ峡南」 集約など女性の社会参画に逆行する対応。女性に関してマイナスイメージの強い長崎知事では改善を期待できない。

⑦ 県委託事業の契約

県が委託するプロモーション契約の委託先重複や随意契約の多さ、県が締結した事業契約や選定事業者の公表の遅れなど、予算が公平かつ透明性を もって客観性を確保しつつ執行されているかを県議会がリアルタイムに把握することが難しい状況となっている。長崎知事は早急に改善すべき。

2. 政 治 姿 勢

二元代表制の一翼を担う県議会議員の意見を県政に反映させることは当然のことであるのに、あたかも長崎知事が「恩恵」を与えたものであるかのような発言は看過できない。国政選挙における特定候補への一方的な肩入れも目立つ。県民の代表たる知事の政治姿勢として県民の理解は得られない。

検証結果

二元代表制の山梨県知事として、今回の検証結果を真摯に受け止め、県政への反映と県民の分断を招かない謙虚な姿勢を強く求める。

2022 長崎県政検証結果

2022
長崎県政
検証結果

2022年 9月 26日 立憲民主党山梨県総支部連合会

2022年 9月 26日
立憲民主党山梨県総支部連合会

目次

長崎県政 検証1-① (新型コロナ感染対策)

 山梨県は、本年9月1日現在で、人口10万人あたりの 累計感染者数が全国の都道府県で上から33番目、同じく累計死亡者数が36番目と感染者数や死亡者数の抑制という点でのコロナ対策には比較的成功した県と言える。しかし、その結果をもたらした主な要因は、医療従事者の皆様の奮闘や県民の皆様がワクチン接種や各般の感染対策に取り組んでいただいたおかげであって、長崎知事が主導した県の対策には、以下のような問題があったと指摘せざるを得ない。

1.新型コロナ対策:「新山梨方式」について

 長崎知事は新型コロナの第6波の最中である本年2月17日の知事臨時記者会見で、学校などで感染者が出た場合、クラスを学級閉鎖し、クラスメイト全員や合同授業などで接触のあったすべての生徒児童の検査を行うとする 「新山梨方式」を発表した。検査自体は学校の駐車場で生徒を同乗させ検体を採取する「ドライブスルー方式」か、教師が検査キットを家庭に届け、検体採取後に再び取りに行く「家庭持ち帰り方式」の2つの方式が設けられたが、いずれも学校現場ならびに家庭への負担は増大することとなった。そして、学校現場や保護者からは「教育の機会を奪うことにつながる」「大人には経済を回すために感染対策をした上での飲食などを認めておきながら子供達には1人でも感染したら全員に検査を強要するのは不公平だ」「クラスで感染をした1人がいじめや批判の対象になりかねない」という批判が続出した。この学校現場、家庭の負担や批判について、長崎知事は「児童・生徒を守っていくために、ここは我々もベストを尽くしていきたいと思いますし、ぜひ、ご家庭、そして学校の先生方にはご理解をいただきたいと思います」と我々がベストを尽くすから皆さんも頑張れとの上から目線の抽象的な回答を述べるのみにとどまった。
 そして、本年2月17日の知事臨時記者会見では「学校や家庭の負担は、短期的に見ればかかり得るのですが、それは最大限ケアします。ただ、この方式で行うことで、トータルで見れば、負担というものは軽減できるという考え方に則っています」と発言したにもかかわらず、実施された負担軽減措置は、検査などで休業せざるを得なくなり、 給与や休業手当が受けられなかった高校生以下の子供がいるひとり親世帯や市町村税非課税世帯に対して1日4,000円を支給する措置であった。あまりに狭い対象者への補助であり、共働き世帯が多い中で、実質的に家庭の負担軽減につながったとは考えられず、長崎知事の言う「最大限ケア」とは何だったのか疑問が残る。
 そもそも、新山梨方式が導入された3月にはすでに「第6波」が収束傾向にあり、学校現場や家庭における負担に相応する効果があったのかは不明確である。長崎知事は、「新山梨方式」導入時の同じく本年2月17日の会見で 「この方式で行うことで、トータルで見れば、負担というものは軽減できるという考え方」と述べ、その後、「新山梨方式」の総括を求められた本年4月11日の知事記者会見において「ある程度感染者も発見できていますので、それ相応の効果があったのだろうと思っております」「先般の新山梨方式の対応というものをしっかり検証をして、より良い対応がないのか、そういうものを考えて、それを問いかけていきたいと思います」と述べている。
 知事記者会見における曖昧な回答ではなく、「新山梨方式」導入時の見込み及び導入後の効果について、具体的な検証を行い、その結果を示すべきではないか。このままでは、長崎知事の思いつきで感染対策を実施し、学校現場や家庭を振り回しただけに終わってしまう。
 具体的な検証結果が示されない現時点では、「新山梨方式」は、子供たちの教育や学校生活を犠牲にした上で、いたずらに検査対象を増やし医療機関や保健所など現場への負担増加につながりかねない施策であるにもかかわらず、具体的な効果が示されない長崎知事の思いつき施策だったと評価せざるを得ない。

2. 新型コロナ対策:「部活動でのマスク」について

 長崎知事は、本年4月の特別協力要請に「部活動でのマスク着用」を盛り込んだ。その理由として、本年4月11日の知事記者会見では、学校関係や運動施設、クラブチームのクラスター急増を挙げている。これに対して学校の現場からは「熱中症のリスクがある」「大会が近い中で部活動の強度を下げることはどこまですればよいのか」といった困惑・反発の声が聞かれた。長崎知事は「子どもの健康を守るという意味では、コロナからも熱中症からも守らなければならない」と述べ、具体的な対応策は現場にすべてを丸投げするかのような姿勢を示した。
 そして、長崎知事は、本年5月17日の知事記者会見で部活動でのマスク着用に関して「県がガイドラインを作る」と述べたにも関わらず、そのガイドラインの内容が発表されたのは「第6波」が落ち着いた本年5月28日の知事記者会見であった。あまりに遅い対応と言わざるを得ない。
 また、本年5月11日の松野官房長官の記者会見では、国の方針として「屋外でのマスク着用を一律には求めない」ことが示された。にもかかわらず、長崎知事は、本年5月17日の知事記者会見で「ただ一般的に必要ないとか言うのであれば、それはやっぱりナンセンス」「そういう乱暴な議論はやっぱり受けられない」とし、この会見でも 「基本的な考え方は必要最小限」と言いながら、部活動中のマスク着用を撤回せず、政策に柔軟性を欠いたと指摘せざるを得ない。
 部活動だけが感染の温床となっていたわけではなく、また、マスクだけで感染を防ぐことができるわけでもない。状況をよく見て、現場の声を聴く力があるのならば、学校に対して換気設備の補助やリモート推進などの補助をより積極的に行うべきではなかったか。
 なお、高校生からはこの時期「大人は飲み歩いているのに何で僕たちばかりが締め付けられるのかがわからない」 という声があった。
 部活動中のマスク着用という長崎知事の政策は、国が屋外でのマスク不要方針を示した後にも、「万が一そこで飛沫感染したらどうするのですか、それは誰が責任取るのですか(中略)感染防止に対して最前線に立つ我々としては、もし単純にそれだけの話であれば、そういう乱暴な議論はやっぱり受けられない」とまるで自らの責任を追及されることを避けるために県内では引き続き「部活動でのマスク着用」を求め、県民に負担と混乱を招いたのではないかと評価せざるを得ない。 

3. 新型コロナ対策:臨時特別協力要請における「ワクチン未接種者」の扱いについて

 長崎知事は、本年1月23日に臨時特別協力要請を発出した。この要請には、「ワクチン未接種者への不要不急の外出自粛」「職場での未接種者に対してテレワークや不特定多数と接する業務を控える配慮」「健康上の理由等により接種を受けられない従業員等が不利益となる扱いを受けないよう配慮」といった点が盛り込まれた。この要請に対して県に「差別につながる」などといった批判の声が1月24日18時までの集計で約1,800件寄せられた。
 また、山梨県選出議員でもある堀内詔子ワクチン接種担当大臣は、接種の有無で差別的な取り扱いを受けることは適切ではないとの認識を示したと本年1月25日に報じられた。
 長崎知事は、本年1月26日に「自粛」を「お控えください」、テレワークの推奨なども「従業員等からの申し出により」などと表現を修正した要請を再び発出した。しかし、ワクチン未接種者に対する配慮の無さ、ひいては長崎知事の要請に「従わないものには不利益を」という考えの透けて見える要請であることは変わらなかった。
 具体的には、「ワクチンの2回接種を終えていない従業員等には、従業員等からの申し出によりテレワークの推奨や不特定多数の方と直接接する業務を控えるなど、勤務環境の配慮をお願いします」としながら、「なお、健康上の理由等により接種を受けられない従業員等が不利益となる扱いを受けないよう配慮をお願いします」として、健康上の理由等がなくワクチン2回接種を終えていない従業員等には不利益な扱いをしても良いかのように長崎知事は「要請」していたのである。
 言うまでもなくワクチン接種は一定の割合で副反応による事故の発生が避けられず、そうしたリスクと発症予防・重症化予防等のベネフィットを勘案して個人の判断に基づいて実施するものである。コロナワクチン接種導入のための予防接種法の改正に際して、国会では「新型コロナウイルスワクチンを接種していない者に対して、差別、いじめ、職場や学校等における不利益取扱い等は決して許されるものではないこと」とする附帯決議が採択された。こうした様々な指摘を全く無視してワクチン接種への同調圧力を助長し県民の分断を招くだけでなく、職場などにおいて接種の有無を理由に希望する仕事から外されることにもつながるなど職業選択の自由を危うくし、さらに職場がワクチン接種の有無について把握することが前提となっているなど個人のプライバシーにも踏み込む長崎知事の要請は極めて悪質・不適切であると指摘せざるを得ない。
 感染防止対策を進める上でワクチン接種率の向上が重要な要素となっていることは理解できるが、行政の姿勢としてリスクとベネフィットの比較のために正確な情報を発信したうえで接種機会の確保、インセンティブ付与などの方法によりワクチン接種の推進に努めるべきであった。 ワクチン接種の推進に当たって、ワクチン接種をしない人に対して不利益を被る可能性を指摘して、いわば「脅し」 のような形で進めるべきものではないことは言うまでもない。

4. 新型コロナ対策:「まん延防止等重点措置」について

 長崎知事は、それまで過去最大であった「第5波」を超えた今年1月の第6波の感染拡大の最中においてもまん延防止など重点措置の適用を国に対して申請しなかった。その理由として本年1月20日の知事臨時記者会見では 「一般的に飲食店においてクラスターが連発しているという状況とまでは言えない」とし、「まん延防止等重点措置のやり方が、この感染拡大の防止に役に立つのかということに対する疑問」とした。しかし、当時飲食店にはすでに感染の急拡大による自粛で閑古鳥が鳴いている状態であり、そもそも飲食店の利用が少ない状況が続いていた。前述した部活動などでのクラスター発生のように、複数の人数で定期的に集まる機会がある場所でのクラスター発生件数と既に人が集まっていない状態であった飲食店のクラスター発生件数を一律に比較することは現実的ではなかった。そして、この時期には東京、神奈川など隣県全てにまん延防止等重点措置が適用されている状態で県外からの飲食店等の需要も見込めない状況であった。県内の飲食店には予約キャンセルが相次いでいたにも関わらず、まん延防止等重点措置が県内には適用されていないため、協力金を受け取ることもできず、店を閉めるかどうか「進退窮まる」というような状態に置かれたと言える。本年2月1日には、飲食店組合などからまん延防止等重点措置適用による協力金支給などの支援の要望があったにも関わらず、支援は全く行われなかった。長崎知事は本年1月20日の知事臨時記者会見で「経済を最大限回していく」と述べたが、既に飲食店には多大な経済的損失が出ている状況であった。当時、プレミアム食事券の発行などの施策を行っていたが利用者は少なく、こちらの施策も効果があったのかは甚だ疑問である。また、当時は学校現場などに対して前述の新山梨方式の導入などを行った一方、食事券の発行などで経済を回すために「飲食を促す」ということはアクセルとブレーキを同時に踏むような矛盾した政策と言える。「ウィズコロナ」の中で経済と感染対策の両立が求められているが、現場の状況よりも行政としての成果を優先する姿勢には、そのリーダーとしての資質に疑問符が 付けられる。
 また、長崎知事は、昨年8月に初めて県内にまん延防止等重点措置が適用された際の昨年8月18日の知事臨時記者会見で「今回の追加は県からの要請によるものではありません」と述べている。日頃、国とのパイプを強調しながら、まん延防止等重点措置の適用という重大事の肝心な時に国と事前に連携をとることができず、しかも、山梨県での感染拡大が重大であることを国が認めるような形でのまん延防止等重点措置の適用という事態を招いたことは、長崎知事が言う国とのパイプが一部のみの不十分なものであるという事が証明されたかと思われる。

5. 新型コロナ対策:「グリーン・ゾーン施設」について

 長崎知事は、コロナ感染拡大当初の令和2年5月9日の知事臨時記者会見で「やまなしグリーン・ゾーン構想」を打ち出し飲食店の感染対策などについて県がお墨付きを与える認証制度を導入した。ニュースなどで全国的にも取り上げられ、長崎知事も積極的にテレビ出演をこなす等アピールをしていた。
 一方、コロナの感染経路としてエアロゾル感染の可能性が専門家から指摘されるようになり、当初は否定的であったWHOや米国CDCも昨年春頃にエアロゾル感染があり得ることを認め、厚生労働省も昨年10月に換気の重要性を指摘し、本年2月には国立感染症研究所がエアロゾル感染をコロナ感染経路の1番目に挙げた。そして、本年7月14日の新型コロナウイルス感染症対策分科会による提言では、アクリルボード等によるパーテーションが換気の妨げとなる可能性が指摘されることとなった。
 だが、本年9月3日現在の「やまなしグリーン・ゾーン認証(飲食業)申請書」には、「テーブル上にパーテーション等を設置して遮蔽している」「以下のようなパーテーションを設置して遮断する。高さ:座った人の頭が隠れる高さ、幅:机と同じ幅、形状:2人掛けは一字、4人掛けは十字、6人掛けはキ字のように隣接する人と遮断されるように配置」といった要件が示されている。これは前述のコロナ分科会提言が指摘する「<換気が阻害される例>」 に示された図に近い状況となる可能性があるのではないか。また、申請書には、「ハンドドライヤー(中略)を禁止」とあるが、経団連の業種別ガイドラインでは、当初ハンドドライヤーについて「利用を止める」とされていたが、2021年4月13日再訂版で利用禁止が解除となった。 「やまなしグリーン・ゾーン認証」は科学的な根拠が不明確であるにもかかわらず、過度に営業の自由を制約する内容を含むものであり、迅速・適切に見直すべきではないか。
 また、「やまなしグリーン・ゾーン認証」を受けるためには、飲食店等は設備投資が必要となる。県による一定の補助はあったものの、収益が減少している中でそうした費用を捻出できず、やむを得ず認証取得をあきらめる飲食店等もあった。にもかかわらず、長崎知事は時短要請の協力金支払いなどにおいて、個々の事情を勘案せずに「やまなしグリーン・ゾーン認証」を取得しているか否かで線引きを行い、「従わないものには不利益を」という長崎知事の傲岸な姿勢が見え隠れする方針を打ち出している。また、令和2年8月7日の知事臨時記者会見では、長崎知事の要請に従わずに営業していた飲食店で発生したクラスターについて、当該店舗に対し「強い懸念と憤りを感じている」 「県民全体の命を脅かしかねない極めて危険な迷惑行為」 と批判するなどクラスター発生の原因を全て当該店舗の事業者側にあるような姿勢を示した。一方、昨年4月21日の知事臨時記者会見で明らかにされたように、「やまなしグリーン・ゾーン認証」を取得していたが感染者が発生した店舗もある。「グリーン・ゾーンにあらねば店にあらず」「グリーン・ゾーンがすべての免罪符となる」という 長崎知事の姿勢は、現状を見ず、自らの功績のみをアピールするために現場を追従させているかのようにも受け取れる。
 また、昨今の「第7波」において感染者がかつてない規
模で拡大しているにも関わらず、利用時間の延長や大皿での提供などの緩和をする「グリーンパス」については継続している。やまなしグリーンパス実施要領の「第5グリーンパスによる基準緩和の停止」には、「県内に感染拡大の傾向がみられる場合」基準緩和の停止を行うことが明文化されているにも関わらずそうした対応がとられていない。
 感染対策を取りながら経済をいかに回していくかがウィズコロナの中での課題であるが「やまなしグリーン・ゾ ーン認証」などの自らの政策にこだわり、科学的な根拠や専門家の提言を踏まえた柔軟な対応をとらず、自らの要請などに従わない店舗を切り捨てるような長崎知事の姿勢は甚だ疑問である。

6. 知事自らのコロナ感染について

 長崎知事は、本年4月16日に新型コロナウイルスに感染したことが報道された。もちろん、感染すること自体は決して悪ではない。しかし、なぜ県内で検査を行い、陽性が判明したにも関わらず、県外の医療機関に入院したのか。もちろん他者と接触機会があるような鉄道等での移動はされていないと思われるが、県内の検査時の居場所から県外の医療機関までの移動手段程度は明らかにすべきではないか。
 また、本年4月27日の知事記者会見では、「主治医の先生と相談をして、その指示に従って療養をした」と説明されたが、県外医療機関での入院は主治医の指示によるものだったのか。県内の医療機関では対応できないような危機的な状況であると主治医が判断されたということなのか。長崎知事は感染前の行動を含めて、感染期間中の行動について一部を除いて「プライバシー」を理由として明らかにしていない。だが、公人として、また山梨県のリーダーとして、コロナ感染時とはいえ県内にとどまらず、説明なく県外に赴くことを良しとする長崎知事の姿勢は、やはり県内に軸足を置いていないように見える。県外にいることが常態化しているような状況では、危機管理等において迅速な対応が可能であるのか疑問である。当時県内ではホ ームケアがスタートしており、長崎知事の言う通り「軽症」 であるならば本来そのホームケアの対象であったにも関わらず入院をしたということについて県民からも疑問の声が上がっている。
 自らの行動について明確な情報開示・説明ができないリ ーダーに県政のかじ取りが任せられるとは思えない。

長崎県政 検証1-② (リニア中央新幹線事業)

 東京都から大阪市に至るリニア中央新幹線の整備計画は、2011年5月26日に最高設計速度505km/hの高速走行が可能な超電導磁気浮上式リニアモーターカー「超電導リニア」により建設する整備計画が決定された。
 リニア中央新幹線は、東京・大阪間の全線開業は最短で2037年、東京・名古屋間の2027年先行開業を目指して2014年12月17日に先行開業区間の起工式が行われたが、事業主体であるJR東海は、2020年7月時点で、2027年開業は困難との見解を示している。
 リニア中央新幹線の整備状況については、1962年、リニアモーター推進浮上式鉄道の研究が開始され、1977年7月からは宮崎県の実験線で走行実験が開始された。
 その後1989年8月、超電導磁気浮上式鉄道検討委員会において山梨県内に新実験線の建設が決定された。
 1997年4月、山梨リニア実験線先行区間(18.4km)で走行試験が開始され、2013年からは実験線全区間(42.8km)で、営業用車両L0系での走行試験が行われている。
リニア中央新幹線の整備計画は、山梨県から始まったといってもよく、当該路線関係自治体の中でもその整備は最も先行して長期間に渡り行われており、山梨県全体の活性化を後押しする、極めて重要な施策として県民にとってその期待は極めて大きいものである。
 長崎知事は、打って出る公約として「リニア中央新幹線開通」を挙げている。しかし、以下に述べるように、その成果は決して評価し得る状況にはない。

1.駅位置で迷走したリニアやまなしビジョン策定事業

長崎知事は、2019年度6月補正予算に主要事業の新規事業として、リニアやまなしビジョン(仮称)策定事業費を計上した。
 「令和元年度6月補正予算の概要」によれば、リニアやまなしビジョン(仮称)策定事業費5,535万7千円について、

リニア中央新幹線がもたらす経済効果を全県に波及させるため、民間企業や研究機関等の誘致に向けた基本的な指針となる「リニアやまなしビジョン(仮称)」を策定する。

1 ビジョン検討事業費3,797万3千円
  誘致の方針や駅周辺の整備内容等を調査・検討する。

2 乗降客数等調査事業費1,738万4千円
  駅位置の検証に必要な乗降客数や既存の交通への影響等を調査する。

としている。
 リニア駅周辺整備に関することについて検討するためには、駅位置が決定していて初めて、周辺整備や誘致等の具体的な検討をすることが可能になることは言うまでもない。駅位置の検討と周辺整備に関する検討を並行して行うことでは、効果的な検討になり得ないことを、まず指摘したい。
 結局、2019年12月18日の記者会見において、長崎知事は、乗降客利用数の僅かな優位性を上げ、就任当初白紙撤回した甲府市大津町への駅位置の再決定を明らかにした。
 「今後は、学識者、地元市、関係団体で構成するリニア駅前エリア整備に係る検討会議を立ち上げ、県、地元市、民間の役割分担を明確にするとともに、駅前エリアに整備する施設について検討を行う」ことを明らかにした。
 つまり、駅前整備の検討は、これ以降ということになる。
 リニア駅位置については、横内正明知事時代に甲府市大津町に設置することを決定した。長崎知事は、「これまでの経緯で重視した点は(甲府市)大津町と小井川駅付近を比較検討していなかった」として、就任後駅位置の見直しを明らかにして、1,738万円の予算を使って両駅位置の乗降客数調査を中心に行ってきたが、県民が8年以上も受任してきた駅位置に改めて疑問を呈するのには、ただ比較をしていなかったというだけでは既存の方針を覆すには不十分ではないか。少なくとも、小井川駅位置という特定の場所に絞って比較するのであれば、小井川駅位置の優位性に関して一定程度客観的な事実を把握していたのでなければならない。本調査は、その事実を検証するためのものでなければならない。
 結果として、やはり大津町に優位性があることが明らかとなり、小井川駅にそのような優位性のないことを自認する結果となった。
 1,738万円もの予算をかけて、ただ長崎知事の思いつきのような内容を確認するための調査を行い、駅位置が決まっていない状況で、駅周辺整備内容の調査・検討に約3,800万円もの予算を支出することについても、行き当たりばったりのバランスシートを無視したお役所仕事と指摘されるべきである。
 さらに、予算の無駄遣い以上に問題なのは、甲府市大津町及び小井川駅周辺の県民の心をもてあそぶことになったこと、そして、後述するとおり、駅周辺整備の遅れにつながったことである。

2.用地取得とりわけ県が突然手を引いたことによる駅周辺整備の遅れ

 JR東海による中央新幹線計画に関する公表資料によると、本体工事契約箇所を見ると、一見して山梨県の区間の契約が遅れていることが分かる。リニア中央新幹線は、山梨県の実験線から始まっており、他県の区間と比較して整備すべき地区が相当程度決まっていることからすれば、深刻な状況と言わざるを得ない。
 令和4年6月県議会において、向山憲稔県議の用地取得交渉の進捗状況に関する質問に対して、リニア未来創造局長は、
「JR東海から受託した用地取得業務における令和3年度末現在の状況は、権利者ベースで総数2,164人のうちその約65%に当たる1,420人と契約締結している」

 と答弁している。上記JR東海の公表資料が示す通り、関係都県の中でも用地取得が遅れている県であることが容易に認識できる。
 とりわけ、中間駅として予定されている6駅中、山梨県駅のみが契約済みとなっていないことは、深刻な状況であると言わざるを得ない。
 駅舎の建設工事については、事業用地の取得状況はもとより、駅周辺エリアの造成計画や道路計画等との整合性も考慮する必要があることから、周辺整備に関する山梨県の準備状況の遅れが影響していることは明らかである。
 山梨県駅の周辺整備に関しては、現時点では駅周辺にどのような機能が必要なのか、誰が整備主体となってどんな施設を整備すべきかといった具体的計画が未だ明らかにされていない。
 横内元知事時代から、県が中心となって甲府市の協力を得ながら周辺整備を進めてきたが、長崎知事は、「他の駅は市町村が駅周辺整備を行っている」として、責任を甲府市に押し付ける形になっているように見える。
 これについて、甲府市議会の令和4年度6月定例会において、金丸三郎議員が、リニア駅周辺の整備に関する質問の中で、

 「私、リニア中央新幹線はずっと関わってきたわけですから、・・・少なくとも(仮称)リニア山梨県駅周辺の件に関して、とにかく今まで山梨県が一方的にいろいろなことを言って、甲府市はだまっていろみたいなことをさんざん言ってきたから、・・・飯田市と岐阜県の中津川市に行ってまいりました。どちらも市が主体的に新駅の予定地に取り組んでおられました。既に飯田市の駅周辺は土地の買収が進んでいるようですし、中津川市は土地の区画整理事業がスタートしておりました。しかるに、甲府市の場合は、全くわが市に口を利くなという状況だったものですから、何もされてないのが当然なんですけれども、それにしても山梨県の今までのやり方というのは私にはどうしても理解できないと思っています」

 等を明らかにしているが、このような経緯を無視して、長崎知事は、「駅周辺整備は市町村がやること」と突き放したものであり、周辺整備の遅れにかかる長崎知事の責任は重いと指摘せざるを得ない。
 令和2年12月14日、長崎知事は、樋口甲府市長と共同記者会見を開催し、「駅周辺都市計画については、これまで県と市の連携不足を指摘する意見もあったが、今後は、さらに連携を強化し、まずは産業系用途による市街化区域拡大の可能性の検討を共同歩調で進めていくことで、県と市が再確認した」として「合同の担当者会議を核として絵柄も早く示したい」と説明し、その後、令和3年3月、「リニア駅前エリア整備の在り方(整備方針)」を明らかにしたが、今に至っても、具体的な整備計画は明らかにされていない。
 後藤前知事の時には、リニア環境未来都市検討委員会を設置して、総合的な検討を着実に進め、平成30年11月には、「リニア駅周辺整備基本計画」の中間とりまとめを行うとともに、対象用地24ヘクタールの地権者に対しても相当の説明と、コンセンサスを得てきていた。その当時から、まもなく4年が経過するが、当時の地権者がどの程度変遷しているのか、また協力意思の変化はおきていないか。4年前から周辺整備計画が進んでいないどころか、後退した可能性が高い。
 駅周辺の用地取得のためには、周辺の整備計画を税務署に提出し事業認定を受けなければ、権利者が税制上の優遇措置を受けることができない。
 令和4年2月16日付「山日新聞」によると、長崎知事は取材に対して、

「リニア中央新幹線整備については、品川-甲府間の先行開業を『おいおい議論に乗せるべきだ』と主張。理由としては『経営上も合理性があるだろうし、地元としても人的、金銭的な投資をしているので、投資を回収する意味でも必要』と述べた」

 としている。
 また、令和4年8月30日の記者会見で、静岡県の川勝知事が、リニア中央新幹線の甲府市と神奈川県を結ぶルートで先行開業すべきだと主張したことについて、

「意味がよくわからないし、今はそういう議論をすべき段階ではない」
 と否定しながら、品川-甲府間の整備が完了した後、南アルプスを通る静岡工区のトンネル掘削工事が終わっていない場合を例示し、
「その段階になってこれまでの投資を寝かしていていいのかという議論は必ず起こる。JR東海が先行開業させようかと思うだけの環境整備をしっかりやっていく」
と説明しているが、リニア中央新幹線山梨県区間の整備の進捗状況とりわけ山梨県駅周辺整備の進捗状況の遅れを踏まえた説明とは到底考えられない。

3.行政の怠慢によるリニアシャトルバスの経路見直し

 上記の経緯の中で、リニア山梨県駅と小井川駅間をシャトルバスで運行する計画を検討し、令和3年2月のリニア駅周辺整備に関する検討会では、従来計画ルートではシャトルバスの1日当たりの利用者が4,700人で、年間の運行経費が数千万円程度とする試算を示し、運賃を200円と設定した場合の料金収入は3億~4億円程度とする推計を明らかにした。
 長崎知事は、令和4年7月15日の臨時記者会見で、1年半以上も運行を検討していたシャトルバスの運行経路を見直す方針を明らかにした。
 その理由について、リニア本線の高架下に約3.2キロの専用道を整備する計画だったが、橋脚の構造上の理由から必要なスペースを確保できない区間が約3分の2あることが判明したと説明した。
 令和4年9月1日付「山日新聞」によると、

 「リニア本線の用地は、幅約22メートルで、走行する軌道が2本の場合、橋脚の両側に約4メートルの緩衝帯がある。県は、緩衝帯を活用し、専用道を約3.2キロにわたって整備する計画を立てた。一般道を使わないことで渋滞の発生などがなく、新たなルートの選定や用地取得の必要がないなどのメリットがあったとみられる。

 しかし、県が昨年、委託事業者を通じてリニア本線の整備計画を確認したところ、軌道が4本になる区間や高架下に歩道を整備する区間があり、実際に専用道を整備できるのは計画の3分の1程度の1キロほどであることが判明。県は、「具体化に向けた検討の中で分かった」と説明する。
 JR東海によると、

 リニア駅周辺の橋脚の構造は2011年に公表した環境影響評価方法書に掲載。2020年には、リニア駅と小井川駅の間の高架橋構造図などを県に提供しており、「リニア計画はかねてより県と情報共有してきた」

 としている。
 シャトルバス運行計画について、重要な当事者と言えるJR東海との連携が全く取れていなかったことを示すものである。それにもまして、2020年には既にJR東海から構造上の資料を入手していながら、それを詳細に確認することなく、昨年度、調査委託した事業者がその事実を把握するという失態を演じた。行政の怠慢と言わざるを得ない。
 2021年度当初予算のリニア未来創造・推進課所管課別説明書には、

リニア駅前エリア整備検討事業費927万3千円
本県の新たなゲートウェイとなるリニア駅前エリアの整備に向けた検討を実施。事業内容、検討会議の開催、シャトルバスのルート、運営等に関する検討

 として計上されている。
 この事業の詳細は定かではないが、当初計画のシャトルバスルートの3分の2が使用不能になった時点で、この委託業務が適正に行われていたのかは疑問である。行政の怠慢により、税金の無駄遣いを生じた結果も極めて重いと指摘せざるを得ない。

長崎県政 検証1-③ (教育環境等の充実「25人学級実現」)

 長崎知事が公約に掲げる「25人学級導入」については、「少人数教育の推進」という方向に立った、全国に先駆けての思い切った施策である。しかしながらその実現に向けては、諸条件の整備、取り分け長期的な財源確保方策がなくてはならない。
 長崎知事は、知事選に向けた課題として、山日新聞の立候補予定者4氏徹底インタビューの中で、25人学級の導入に関して、財源確保について問われ、

 「希望する市町村の協力がどこまで得られるかも影響するが、当面は企業局による水力発電など電気事業関係の収益を活用できないか考えたい。最終的には、富士山の登山鉄道の収益を財源にすることを念頭に置いている。鉄道は県所有の富士スバルラインに敷けば賃料が入る。(鉄道の運営会社に)県が出資すれば配当があり、課税などによる乗客からの収入も考えられる。富士山からの恵みとして、県内の子どもたちに配分する仕組みを考えている」

(山梨日日新聞 縮刷版検索 立候補予定者4氏徹底インタビュー 2019年1月1日(火)/特集/007)

 と説明した。
 現状では、財源確保については、富士山登山鉄道からの収益利用については、一切触れられておらず、電気事業関係の収益活用及び資産活用等と説明しているが、どれも長期的な財源確保方策とするには先行きが不透明であり、堅実な財源にはなり得ないものであると認められる。
 現場からは、「児童の意欲向上」、「教員の負担軽減につながり、先生がゆとりをもって子供に向き合うことができている」等の25人学級導入の効果の声が挙げられている。
 現在、国としては小学校の35人学級実現にとどまっているところ、県独自で25人学級を中学校まで拡大していく方針とすると、長期的かつ安定的で莫大な財源が必要と考えられる。中学校までの25人学級を真摯に実現しようとするならば、今後の児童・生徒数の推移の予測、校舎等の設備に要する経費の見込みといった25人学級実現のために必要となる数的予測と的確な財源確保方策を示すべきである。これらが示されていない以上、中学校までの25人学級導入は、現段階では評価できる状況にはない。

1.国の小学校35人学級の実現

 国は、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(義務標準法)を改正し、平成13年度には40人を下回る学級(少人数学級)の編制を可能とする制度整備を行い、平成16年度には少人数学級実施のために加配定数を活用可能とする方針を決定した。
 これを受けて、平成13年度には、10県が40人を下回る少人数学級編制を、また平成16年度には、42県が40人を下回る学級編成を行っている。
 また、国は、令和3年にも義務標準法について、

1 小学校の学級編制の標準を現行の40人(第1学年は35人)から35人に引き下げる(法第3条第2項)。
2 令和7年3月31日までの間における学級編制の標準については、児童の数の推移等を考慮し、第2学年から第6学年まで段階的に35人とすることを旨として、毎年度政令で定める学年及び文部科学大臣が定める特別の事情がある小学校にあっては、40人とする。

 等の内容の法改正を実施した。当該改正は、令和3年4月1日に施行した。
 学年進行による段階的学級編成の標準の引き下げは、以下の表のとおり(それぞれの年度にそれぞれの学年の35人学級化を実施)

年度R3R4R5R6R7
学年小2小3小4小5小6

 計画の実施に当たり、学級数の増加に伴い教室不足が生じ、施設整備に一定期間を要するなど、特別の事情がある場合には、各地方公共団体がその実情に応じて対応できるよう措置するとしている。

2.山梨県の学級編制の状況

 平成16年には、「かがやき30プラン」を実施、当時国の学級編制基準の標準が40人であったのに対し、山梨県は小学校1年生の学級は30人を基準とした。平成17年には、それを小学校2年生にまで拡大した。
 平成20年の「はぐくみプラン」では、中学校1年生に対し、35人を基準とする学級編制を導入した。
 平成23年からは35人学級の対象をそれまで対象とされていなかった学年(小学校3年生から6年生までと中学校2年生及び3年生)に段階的に広げ、平成26年度には小中学校の全ての学年において導入した。(やまなし in depth 教育・子育て)

3.山梨県の25人学級の導入

 山梨県は、従来の小学校1~2年生の30人学級、3年生の35人学級を25人学級にすべく、5回にわたり検討委員会を開催し検討を進めてきた結果、令和3年4月から全国でも初となる25人学級を小学校1年生で導入し、さらに令和4年4月から小学校2年生にまで拡大した。

4.25人学級導入に伴う現場の声

 県の「やまなしin depth 教育・子育て」によると、現場からの25人学級導入に伴う効果及び課題として、
(1)効果
(2)課題

5.25人学級導入における問題点

 県の「マイ広報紙」によると、

小学1年生への25人学級の導入に伴い、今年度は県内公立小学校166校のうち、22校で学級と教員の数を増やしましたが、今後も少人数学級の導入を進めるには、施設・設備などに要する財源や教員の確保、また教員の質の向上が求められます。

 とされている。

(1)25人学級導入に対する各種数的予測が不明確

 知事が選挙公約に掲げる「25人学級の導入」については、中学校3年生までの導入を拡大した場合に、増加する学校数及び教員数、さらには教室数が年度ごとにどの程度必要となるのか客観的な数的予測を明確に示して、県民に周知する必要がある。
  また、25人学級については、その編制について具体的な基準を定めているのか。つまり、極端な例を挙げると、26人の生徒がいる場合には、25人学級を機械的に実施して、13人ずつのクラス2つで対応するのか。それとも、一定程度の幅を許容するのか、幅を許容する場合どこで線引きするのかも明確にしなければ、将来のクラス編成でアンバランスを生じる恐れがある。
 さらには、将来的に少子化が進んだ場合、児童・生徒数の減少はどの程度進むのか、その時、最大限拡大した教員数が、余剰人員として負担を及ぼすことにならないのか。そうした、小中学校の全学年について25人学級を導入した場合の将来にわたるシミュレーションを行い、県民に説明すべきである。

(2)長期的な財源確保方策の欠如

 前記シミュレーションがあって初めて、必要な財源が算定できるのであり、その必要な財源について、明確な説明を要する。それぞれの課題について、以下、指摘する。

課題 ①

公約の説明、富士山登山鉄道の収益を財源とすることは困難

知事は、知事選に向けた山日新聞のインタビューに答え

「企業局による水力発電など電気事業関係の収益を活用できないか考えたい。最終的には、富士山の登山鉄道の収益を財源にすることを念頭に置いている。鉄道は県所有の富士スバルラインに敷けば賃料が入る」

 と説明したが、現在は、富士山登山鉄道の収益を財源にすることについては、一切明確にはしていない。今後実現するか不明な富士山登山鉄道の収益を25人学級実現の予算に充てるという長崎知事の方針では、既に小学2年生まで実施している25人学級について、今後中学3年生まで導入するための財源がいつ確保されるのか。当分の間は不可能である。そもそも、富士山登山鉄道については、基本構想を策定したものの、地元の大きな反対を受け、地元対策すらとん挫している状況に加え、冬季の安全対策(防災工事)と環境保全(世界文化遺産登録での厳しい制限)を両立することの困難な中で、実現が危ぶまれている。小中学校の全学年で25人学級を実現するための財源として想定するには、あまりにも実現可能性に欠ける。これでは、小中学校の全学年を25人学級とすることはできないのではないか。

課題 ②

電気事業会計からの繰り入れ、法人県民税の超過分積み立ては的確か

長崎知事は、教育・福祉のための財源確保方策として、電気事業会計からの繰入金と法人県民税の超過課税分を積み立てる「やまなし教育環境・介護基盤整備基金」を新設した。また、県有資産の高度活用を基金に積み立てる考えも示している。
電気事業会計は、電気事業の中心を占める水力発電を効果的に運用するために、恒常的なメンテナンスと、将来、老朽化した施設を補修・建て替え費用として積み立てる必要があることから、一時的な財源としかなり得ない。電気事業会計からの流用を行うためには、恒常的なメンテナンス費用及び施設補修・建て替えのビジョンと費用を長期的に明確にした上で、余剰金を流用するという明確な説明が必要であるが、これまでそのような説明はなされていない。
また、法人県民税の超過課税分についても、超過課税分は具体的にどの程度が見込まれ、長期的なシミュレーションはどのような状況にあるのか、これについても説明されていない。

課題 ③

その他恒久、安定財源確保方策に実効性はあるか

県は、令和2年10月、「財源確保対策方針」を策定し、財源確保に向けて県有地の賃料見直しや未利用地の売却、ふるさと納税の増収などに取り組むこととしている。こうした各種の増収策は実効性があるのか。

【県有地の賃料見直し】

 県は、令和2年11月、全ての県有地賃料の見直しを明らかにし、県有地の賃料算定基準を開発前の土地価格から現況で算出する方法に変更して見直し作業を進めているが、95件の減免措置の結果、賃料の増加分は計約88万円にとどまったことが報じられている。
 県は、富士急行に貸し出している北富士県有地の莫大な賃料増額による財源確保を見込んでいるものの、県と富士急行との間で現在係争中の裁判が近いうちに判決となる見通しであり、もし県が敗訴することになれば、長崎知事の財源確保の目算は大きく外れることになる。

【未利用地の売却】

 令和元年から令和4年度の未利用地の売却金額は、7億9,715万4,698円で、後藤県政時代の1億9,728万円の約4倍となったとしている。しかし、当然のことであるが未利用地の売却は一過性のものであり、安定財源とすることは困難である。これを恒久的な財源と位置付けるには、長期的に売却可能な未利用地が存在するか、借地とするか、売却益を運用する等の仕組みが必要である。こうした長期的なシミュレーションが必要であるが、具体的な説明はない。

【ふるさと納税】

 ふるさと納税については、令和3年度の寄付額が令和2年度の寄付額の約5倍の約8億8,213万円で過去最高としている。
 ふるさと納税予算については、令和元年度915万4千円、令和2年度4,172万円、令和3年度4億7,806万4千円、令和4年度当初6億2,432万1千円と増加している。
 令和3年度のふるさと納税による実質税収は4億407万円となっている。
 長崎知事は、令和4年4月27日の記者会見で、「山梨県ふるさと納税推進本部」を設置したことを明らかにした。

 令和4年6月8日付「読売新聞」では、

「県がふるさと納税の寄付増加を目指す方針を打ち出したことに対し、市町村の間で波紋が広がっている。これまで返礼品の拡充やPRに奔走してきた市町村と競合する構図となるためで、市町村からは『県の方針は大きな脅威だ』と不安視する声が上がっている」

 として、返礼品の競合問題等について掲載した。
 同記事によると、

 「自治体が寄付者に送ることができる返礼品は、原則として地場産品に限られる。一方、県は県内全ての市町村の返礼品を扱えるため、総務省の担当者は、何でも送れる県が本気を出せば『最強だ』と語る」

 と、県の優位性を説明している。
 また、

「県資産活用課によると、県が取り扱う返礼品の品目数は、19年以前の100件程度から、現在では約1,700件にまで拡大した」

 としている。
 さらに、ふるさと納税に詳しい小黒一正法政大教授は、

「県は市町村より上位の自治体なので、一定の配慮は必要と言える。市町村が育ててきた返礼品を上から刈り取ってはいけない」
と説明している。

 県という広域自治体の優位性を利用して県下の市町村の上前をはねるかのような方針は、当然のごとく市町村に受け入れられるものではない。
 結果、令和4年8月31日、県と県市長会との意見交換会において、市長側から県側の返礼品を見直すよう求める意見が相次いだことで、長崎知事は、シャインマスカットなど農産物の返礼品を大幅に減らす方針を表明した。この方針転換により、当初長崎知事が期待していたほどの効果的な安定財源とすることは困難になったものと指摘したい。

(3)教員確保方策は適切か

 「マイ広報紙」では、教員の確保については、

 「採用試験の要件緩和や、県内外の高校生、大学生に向けて教員の魅力を発信するなどし、また、教員がそれぞれのステージで身に着けるべき資質・能力を明確化した『教員等育成指標』を定め、研修などにより質の向上を図っています。さらに、県内の大学と連携し、教員の質の向上に向けた研修や人事交流を行うなど、地域と連携した取り組みも行っています」
 としているが、この内容からは、採用試験の要件緩和による教員の質的低下を踏まえた上での、教員の資質・能力向上化対策を行うとしている説明と読み取れる。これが効果的な教員の確保方策と言えるのか甚だ疑問と指摘せざるを得ない。

6. 総括

 現状は小学1・2学年に限られるとはいえ、全国で初めて25人学級を実現したことは、保護者・父母・教育関係者・関係団体等から大いに評価されている。しかしながらこの施策は、小中学校の全学年に25人学級を実現することにおいて、その効果を十分に発揮するものであり、確実に学年進行させるということが、極めて重要な政策課題だと言える。その実現においては、学校の設備拡充、優秀な教職員の確保、そして、何よりも安定的かつ恒久的な財源の確保といった問題を避けて通ることはできない。
 長崎知事が公約に掲げた「25人学級導入」について、実施から2年がたち、特に財源の面で実効性が強く疑われるものである。「25人学級導入」という施策そのものは、「少人数教育の推進」という視点から大いに評価できる。
 しかし、その実行・推進にあたっての今後の見通しについては、評価できる状況にはないと言える。

長崎県政 検証1-④ (県民共有財産のブラッシュアップ)

 長崎知事は、「守ろう、増やそう『県民資産』」を掲げている。また、「県有地は、山梨県民全体の最大の財産です。この県有地からどのようにして、県民全体の利益と豊かさを生み出せるのか。大きな価値のある財産を、合理的な理由無く廉価で貸与することは許されず、現在の状況(現況)に照らして適切に評価し、適正な収益を県民に還元することこそ、行政が果たすべき正義です」としている(令和4年3月15日県有地住民訴訟判決知事コメント)。
 県民共有財産を最大化し、県民に還元することは、県政運営において重要なテーマである。

1.県有地問題

 山梨県が富士急行に昭和2年(1927年)から貸し付けている山中湖村の約440ヘクタールの県有地について、「賃料が安すぎる」として南アルプス市の男性が2017年に提訴した、住民訴訟の中で、県は「賃料は適正」としていたが、2020年8月に「賃料算定に重大な誤りがあった」と方針を転換。現在の賃料約3億3千万円の約6倍にあたる「年間20億円が妥当」との不動産鑑定書を提出し、「現在の契約は『違法・無効』」と主張している。

(1)突然の方針転換に恣意的・政治的な意図がなかったか

 住民訴訟の原告である南アルプス市の男性について、長崎知事は「支援者である」と認めている。後藤県政時代かつ2017年の衆議院選直前に行われた住民監査請求であり、当時より政治的な意図が背景にあるとの見方は強い。
 長崎知事は、本会議や記者会見等で政治的な背景については再三にわたり否定している。しかし、「政治的な背景による恣意的な方針転換だったのではないか」との疑いをもたれる県民は多い。
 その理由の一つとして、不動産鑑定士と長崎知事の関係もある。当該県有地を約20億円とした不動産鑑定士は住民訴訟が提訴された当時(2017年)に原告側が行った記者会見に同席。加えて、県議会の特別委員会に於いて、不動産鑑定を行うきっかけについて「長崎知事の深澤秘書から連絡をもらった」と答えている。原告と被告双方の不動産鑑定を同一人物が行い、さらに長崎知事の支援者である原告や長崎知事の秘書とも関係があったという事実が存在する。

 ※当該鑑定士については、国土交通省に懲戒要求がされている。
 仮に政治的な背景と恣意的な政治判断があってこの方針転換が行われたとすれば、公平公正な県政運営とは言えない。加えて、その他の県政課題における政策決定においても同様に政治的・恣意的な事例があった可能性も否定できなくなってしまう。

 参考:山梨日日新聞
 2020年11月11日付「背景に2区政治対決か」
 2020年11月12日付「論説;政治対決ととられぬ対応を」

(2)方針転換までのプロセスに問題はなかったのか

 政策的な方針転換を行う場合において、政治的な判断だけではなく、行政側のプロセスを適切に経る必要がある。県有地問題における方針転換のプロセスについて、執行部側は議事録として手書きメモの3枚を特別委員会に提出したが、「県側が何か隠しているのではないか」との指摘もあった。県庁内からも疑問の声が出ているとされる。
 昭和初期から続く見解を大転換した意思決定の経緯として、会議録も決済文書も存在せず、3枚のメモしか確認できなかった、とは行政組織としてにわかに信じられない事態である。山梨日日新聞の論説(2021年1月20日付)では「文書がない」と担当部署が答弁するのは、森友・加計問題を連想させると指摘している。
 方針転換の是非は別として、長年の方針転換に関する詳細な資料の提出はあってしかるべきであり、現状では不十分と言わざるを得ない。

 参考:山梨日日新聞
 2021年1月19日付「県資料転換の議会録提出手書きのメモ3枚」
 2021年1月20日付「論説;大転換の経緯メモ3枚とは」

(3)住民訴訟の和解案に関する疑義

 甲府地裁の鈴木順子裁判長(当時)は、2020年12月に開かれた住民訴訟の弁論で、長崎知事が県議会に提出していた和解案に対して「裁判所としては和解を勧めていない」と指摘し、地裁の関与で原告側と和解交渉したと県議会に説明した県の代理人弁護士に苦言を呈した。新聞記事によると、県議会に提出された和解案に「裁判所から和解の試みがなされた」と書かれていたことに鈴木裁判長が「どうして議会に提出する書面に事実と違うことを書くのか」と指摘。県の代理人弁護士は「誤解だった」と釈明した。
 この問題をめぐっては、県執行部や代理人弁護士が県議会の特別委員会等で釈明する場面もあり、2021年1月18日の県議会特別委員会では、市川総務部長が裁判所による和解がなされなかったことを認めたが、「事実と異なるものを示してはいない」として虚偽の意図はなかったと説明した。
 和解案については、県議会が継続審査としたことで結果的に取り下げとなったが、鈴木裁判長が住民訴訟の弁論で事実誤認を指摘する前に和解案が可決されていた可能性もある。議会審議において議案の提出理由は、採決に関係する重要な部分であり、事実誤認と受け止められるような取り扱いになったことについて県側は猛省するべきであり、恣意的か否かは別にして県の代理人を務める弁護士の資質については疑問を持たざるを得ない。


 参考:山梨日日新聞
 2020年12月25日付「裁判長和解を勧めていない」
 2021年1月19日付「県陳謝『地裁勧告ない』」

(4)評価

 県民共有の財産である県有地からの利益を最大化するという方針は当然である。一方で、過去に特定企業が県有地を使って利益を上げる、または、県に便宜を図ってもらうような事実があったのであれば、すぐにでも適切な状態に戻すべきである。ただ、県と賃借人の間で、金額等で主張の違いがあるのであれば、当事者間での解決を模索し、結論が得られないのであれば司法による判断が必要である。
 住民訴訟等で、県民への利益の還元がなされば大変喜ばしいことであるが、従来の方針を大転換するにあたり、政治的・恣意的運用と疑われないようなプロセスを経るべきであった。「適切なプロセスを経る」「県民に説明を果たす」、これができなければ独善的な県政運営と言わざるを得ない。国政にも通じるが、政策決定に関する疑義が生じることがあれば、徹底的に疑義を排すための説明を議会及び県民(有権者)に行うべきである。
 以上のことから議会を二分することとなった県有地問題において、十二分な説明責任が果たされているとは到底言えない。住民訴訟及び民事訴訟の判決次第では、県の方針転換が適切か否かの責任を求められる可能性もある。

2.弁護士費用問題

2021年の山梨県議会2月定例会は、県有地をめぐる総額6,600万円の調査業務委託や約2億円の弁護士費用が議論の中心となり、71年ぶりに予算修正や再議が行われた。長崎知事は4月、富士急行との訴訟に絡む弁護士費用1億4,300万円を専決処分。県議会は6月定例会で賛成多数で専決処分を承認した。
一方で、多額の弁護士費用の支出が問題として住民訴訟が起こされている。

(1)弁護士報酬6,600万円(調査業務委託)

 県は2021年1月に住民訴訟で代理人を務める足立格弁護士(東京弁護士会所属)と、歴代知事の過失などを調べる総額6,600万円の調査業務委託を結んだ。タイムチャージ制(時間報酬制)を初めて採用し、弁護士4人トータルで時給16万円の見積書を基に即日契約。人件費など総務管理費から流用する形で支出されており、議会に諮ることがなかっただけでなく、県議会の特別委員会で弁護士契約に関する質問があった際も契約の事実自体を認めなかった。
 契約内容が判明したのは、議会が要求した関連資料が出てきた後で、契約自体を隠していたとも取れる執行部の対応に、議会からは批判の声が上がった。2月定例会での総務委員会では、説明責任を果たすよう求める付帯決議を全会一致で可決。一般感覚では高額に映る弁護士報酬をめぐる議論のきっかけとなった。
 県は当時、足立弁護士と4種類の契約を結んでいた。

① 顧問弁護士料  毎月22万円
② 訴訟委任契約  毎月22万円
③ 調査業務委託  総額6,600万円
④ 検証委員会費用 日額9,800円(開催日数)

 参考:山梨日日新聞
 2021年2月5日付「論説;“自作自演”誤解招かぬように」

(2)弁護士報酬1億4,300万円の専決処分

 県議会2月定例会で予算計上された約2億円の弁護士報酬については、着手金の算定根拠や債務負担行為の内容が不適切だとして、当初予算の修正案が可決された。予算案は可決後すぐに、長崎知事により再議に付されて、再可決に必要な3分の2以上の賛成に達せず最終的に否決となった。予算修正案とともに賛成多数で可決された弁護士選定に関わる条例案についても再議が行われ、条例案は廃案となった。予算修正案の再議は1950年ぶり、条例案の再議は初めてで、県政史上ない再議権の行使であった。
 長崎知事は議会閉会後、弁護士の報酬等に関する指針を作成。経済的な利益が大きい裁判に関しては、国内で一般的に用いられる基準に沿って着手金等を定めるとして、具体的な金額は示さなかった。
 その後、長崎知事は2021年4月30日付けで、富士急行との訴訟に係る弁護士費用1億4,300万円を専決処分した。理由については「議会を招集して審議する時間がなかった」とした。

 参考:山梨日日新聞
 2021年5月7日付「論説;弁護士費用1.4億円専決処分」

 これらの着手金については、県議会の特別委員会に出席した細田浩弁護士(以前の山梨県顧問弁護士)は、「一般の弁護士の感覚だと高い」と述べている。細田弁護士は、顧問弁護士の当時に顧問料と訴訟対応を含めて月額49万9千円で受任しており、「私はこうゆう金で受任はできない。当時は公益弁護士という自覚だった」とも説明した。
 弁護士費用1億4,300万円の専決処分は、2021年6月定例会で賛成多数で承認された。

(3)県の代理人弁護士と長崎知事の関係性

 県の代理人弁護士を務める足立格弁護士は、県議会の特別委員会における参考人質疑で長崎知事とは大学の同窓・先輩であり、顧問弁護士を受任する以前より知人関係にあったことを認めている。
 県関係者によると、長崎知事と懇意の関係にあるA氏が社長を務めるコンサルティング会社(本社・東京)の顧問弁護士を足立氏が務めていた。しかし、6,600万円の調査業務委託費が21年1月にマスコミに取り上げられるようになった後は、ホームページ上から顧問弁護士の名前が削除された。足立弁護士は参考人質疑において、A氏のことを問われ知人関係であることを認めている。

(4)評価

 弁護士費用については、県民感覚との乖離が目立った。必要な予算については情報公開を徹底して説明を尽くしたうえで執行されるのが望ましい形であり、今回のケースは、予算流用という格好で議会への説明が後回しになってしまったこと。予算修正されるなど議論の中心となっていた弁護士費用を議会に諮らずに専決処分にしてしまったこと。さらには、弁護士の選定に関して不明瞭な部分があったことなど、県民の不信を招く要因が重なったと考える。
 山梨県弁護士会所属の弁護士からも一連の問題については疑問の声や批判的な意見も出ている。県有地問題に端を発した弁護士費用問題については、改善すべき点が多くあったと評価できる。

3.その他

(1)電気事業会計からの繰入・法人県民税超過課税分の利用

 長崎知事は、教育・福祉のための財源確保方策として、電気事業会計からの繰入金と法人県民税の超過課税分を積み立てる「やまなし教育環境・介護基盤整備基金」を新設した。また、県有資産の高度活用を基金に積み立てる考えも示している。
 電気事業会計は、電気事業の中心を占める水力発電を効果的に運用するために、恒常的なメンテナンスと、将来、老朽化した施設を補修・建て直す費用として積み立てる必要があることから、一時的な財源としかなり得ない。電気事業会計からの流用を行うためには、恒常的なメンテナンス費用及び施設補修・建て替えのビジョンと費用を長期的に明確にした上で、余剰金を流用するという明確な説明が必要であるが、これまでそのような説明はなされていない。
 また、法人県民税の超過課税分についても、超過課税分は具体的にどの程度が見込まれ、長期的なシミュレーションはどのような状況にあるのか、これについても説明されていない。

(2)県有地の賃料見直し

 県は、令和2年11月、全ての県有地賃料の見直しを明らかにし県有地の賃料算定基準を開発前の土地価格から現況で算出する方法に変更し、見直し作業を進めているが、95件の減免措置の結果、賃料の増加分は計約88万円にとどまったことが報じられている。
 県は、富士急行に貸し出している北富士県有地の莫大な賃料増額による財源確保を見込んでいるものの、県と富士急行との間で現在係争中の裁判が近いうちに判決となる見通しであり、もし県が敗訴することになれば、長崎知事の財源確保の目算は大きく外れることになる。

(3)未利用地の売却

 令和元年から令和4年度の未利用地の売却金額は、7億9,715万4,698円で、後藤県政時代の1億9,728万円の約4倍となったとしている。しかし、当然のことであるが未利用地の売却は一過性のものであり、安定財源とすることは困難である。これを恒久的な財源と位置付けるには、長期的に売却可能な未利用地が存在するか、借地とするか、売却益を運用する等の仕組みが必要である。こうした長期的なシミュレーションが必要であるが、具体的な説明はない。
 売却された県有地6件の内訳は、民間3件、自治体3件である。
 民間に売却された土地のうち、令和2年8月19日、一般競争入札により、旧免許センター跡地11,836.58㎡が、2億5,744万円でMs物流に落札された件に関しては、当該土地は、もともと県が同社に貸し出していた土地であり、一部は県の防災倉庫としても活用していた。
 さらに県は、2021年度11月補正で南アルプス観光高付加価値化調査検討業務1,500万円(観光資源課)を計上し、プロポーザルで事業提案した。結果、オリエンタルコンサルタンツが1,498万2千円で契約した。
 仕様書によると、(1)広河原の観光コンテンツ開発、(2)広河原周辺(南アルプス地域)の観光資源との連携等が挙げられている。
 南アルプスは、北アルプスと並ぶ北岳、間ノ岳、農鳥岳、千丈岳、鳳凰三山、甲斐駒ヶ岳等、豊かな名山が連なる全国でもトップクラスの人気を誇る地域である。
 南アルプスと北アルプスとの登山者数の格差は、交通アクセスの違いが大きく影響している。
 例えば、売却した場所をモータープールとして、同所から広河原周辺、北沢峠までのシャトルバスを運行すれば、中部横断道の静岡、山梨間の開通効果も含め、観光活性化に繋げることも一つの方法として考えられたのではないか。
 県有資産の高度活用として、未利用地売却が有効な手段とはとうてい言い難い。

(4)ふるさと納税

ふるさと納税については、令和3年度の寄付額が令和2年度の寄付額の約5倍の約8億8,213万円で過去最高としている。
ふるさと納税予算については、令和元年度915万4千円、令和2年度4,172万円、令和3年度4億7,806万4千円、令和4年度当初6億2,432万1千円と増加している。
令和3年度のふるさと納税による実質税収は4億407万円となっている。
長崎知事は、令和4年4月27日の記者会見で、「山梨県ふるさと納税推進本部」を設置したことを明らかにした。
同記者会見で記者が、

 「市町村の返礼品とその特産品が例えば重複しないようにするとか、そういったことを考えるのかあるいは、もうふるさと納税っていう制度上、それはある程度競争みたいになってしまう部分があるのはもういたし方ないっていうふうに考えているのか」
と質問したことに対し、知事は、
「基本的には市町村の努力というものとバッティングしない方向で考えていきたい。例えば今県が開発している様々な新品種はバッティングしないと思う。オリジナルのものを生み出していきたい」

 と説明した。
 令和4年6月8日付「読売新聞」では、

「県がふるさと納税の寄付増加を目指す方針を打ち出したことに対し、市町村の間で波紋が広がっている。これまで返礼品の拡充やPRに奔走してきた市町村と競合する構図となるためで、市町村からは『県の方針は大きな脅威だ』と不安視する声が上がっている」

 として、返礼品の競合問題等について掲載した。
 同記事によると、

「自治体が寄付者に送ることができる返礼品は、原則として地場産品に限られる。一方、県は県内全ての市町村の返礼品を扱えるため、総務省の担当者は、何でも送れる県が本気を出せば『最強だ』、と語る」

 と、県の優位性を説明している。
 また、

「県資産活用課によると、県が取り扱う返礼品の品目数は、2019年以前の100件程度から、現在では約1,700件にまで拡大した」

 としている。
 さらに、ふるさと納税に詳しい小黒一正法政大教授は、

 「県は市町村より上位の自治体なので、一定の配慮は必要と言える。市町村が育ててきた返礼品を上から刈り取ってはいけない」

 と説明している。
 県は、実際には、希少価値のウィスキーや競合するシャインマスカットをやや安価な寄付額の返礼品とすることなど、まさに他社が苦労して開発した商品をそっくり真似して他社より安価で販売するような行為であり、まるで県が模造品を売るかのような行為でふるさと納税の拡大に取り組んでいる。
 また、各市町村の「良いとこ取りをして組み合わせる」など、あたかも知恵を絞った工夫のように説明しているが、結局、各市町村としては、良いとこ取りされた県の返礼品に単独で勝てるわけがなく、各市町村にとっては、より悪質な競合となり、県による「優越的地位の乱用」とすら言える。
 さらに、赤いシャインマスカットを念頭に、県が開発している様々な新品種はバッティングしないと言っているが、そもそも新品種は、各市町村が汎用化して育成していくために開発しているものではないのか、県が行う品種改良は、そのためのものと理解している。
 そうであるなら、良い品種であればあるほど、実用化(汎用化)した時点で、競合を招くのは当然で、それは開発した県に独り占めの権利があるということか。
 県という広域自治体の優位性を利用して県下の市町村の上前をはねるという最も恥ずべき行為ではないか。このような方針が市町村に受け入れられるわけがない。
 結果、令和4年8月31日、県と県市長会との意見交換会において、市長側から県側の返礼品を見直すよう求める意見が相次いだことで、長崎知事は、シャインマスカットなど農産物の返礼品を大幅に減らす方針を表明した。この方針転換により、当初長崎知事が期待していたほどの効果的な安定財源とすることは困難になったものと指摘したい。

4.地下水・ミネラルウォーター税

(1)ミネラルウォーター業界における山梨県の地位

 一般社団法人「日本ミネラルウォーター協会」の直近のまとめ(2021年)では、都道府県別で山梨県のシェアは38.1%にのぼる。2位の静岡県は半分以下の13.6%で、3位の鳥取県は8.9%、4位の岐阜県は7.7%、5位の熊本県は5.3%となっている。

(2)地下水、ミネラルウォーター税導入の主な経過

 〇2000年
 山梨県では、平成12年から、水源涵養に係る施策に要する費用に充てるための法定外目的税として、森林整備に要する費用について、受益者負担の考え方から、特別の受益を得ているミネラルウォーター業界に負担を求めるとする「ミネラルウォーターに関する税」の導入についての検討を行った。

 〇2006年
 横内知事が設置した租税法の専門家などで構成する検討委員会は、ミネラルウォーター税について、ミネラルウォーター業界の地下水利用の受益が、他の業界よりも特別に大きいとは言えないことなどから、積極的に評価することは難しく、慎重な対応が望まれるとの検討結果報告を出した。県ではこの報告を受け、導入を断念した。なお、その背景には業界側の猛反発があったとされる。

 〇2018年
 県の導入断念を受けて、県議会として、自主財源が乏しく、大変厳しい山梨県の財政状況に対応し、魅力ある地域づくりを推進するため、新たな税源の創設に向けて提言することとし、2018年4月に、ミネラルウォーター税導入に関する政策提言案作成委員会を設置した。「ミネラルウォーター税を導入に関する政策提言検討委員会」(委員長・皆川巌県議、古屋雅夫県議他の委員10名で構成)を県議会内に設置した。検討委員会は、2019年3月7日に提言案を決定した。

 〇2019年
 検討委員会がとりまとめた提言案は、2019年3月15日の2月定例会閉会日において、県議会で「地下水に着目した法定外税導入に関する政策提言」として可決された。同日、県議会議長、検討委員会委員長らにより、「地下水に着目した法定外税導入に関する政策提言」が知事に対して行われた。

【「地下水に着目した法定外税導入に関する政策提言」主な内容】
  • 今後、県が魅力ある地域づくりを推進していくためは、新たな税源を創設し、財政の安定・強化を図ることが必要不可欠
  • 県固有の状況を鑑み、一般財源として幅広い事業に活用できる法定外普通税を創設するべき
  • 地下水が将来にわたり守り継いでいかなければならない県民共有財産であることを踏まえ、県では事業活動により地下水が多く採取され、利益が生じている状況にあるため、地下水の利用に対しての課税を検討するべき
  • なお、製品の洗浄など利用後に排水として河川に戻したり、公共利用として水道事業として使用したりする分を課税対象としてどう考慮するのか、また小規模採取者への配慮から課税最低限を設定するのかなどについて検討する必要
  • 課税対象として、地下水採取行為全般、地下水を原料とした製品の生産、県内地下水の県外への移出などが想定されるので、課税標準の把握、実際に徴税する際のコストなど幅広く、専門的な見地から検討し、決定すべき
  • 具体的な税の制度設計にあたっては地下水の利用状況、本県の経済の影響など精査を行い、県民、納税者の理解を得られるよう進めるべきである
  • 以上を踏まえ、法定外税導入に向けた検討を早急に進められたい

 〇2022年
 県議会から提出された「地下水に着目した法定外税導入に関する政策提言」を受け、県は県独自の財源について検討するため、2019年8月に「山梨県地方税制等検討会」を設置し、本格的な議論を開始した。その後、2022年3月までの間に9回の検討会を開催し、同年6月に「地下水に着目した法定外普通税のあり方についての報告書」を取りまとめた。

【「地下水に着目した法定外普通税のあり方についての報告書」主な内容】
  • 本検討会に求められているのは「法定外普通税のあり方」の審議までであり、法定外普通税の導入の是非のような政策そのものについて論じるものではない
  • 今後、山梨県及び山梨県議会において、法定外普通税の導入に向けた具体的な制度設計を行うこととなった場合には、本検討会における法定外普通税のあり方の議論について十分に留意するとともに、県民・事業者に対して制度の趣旨や内容が十分に理解されるよう丁寧に説明していくことを望む
(3)評価

 自主財源が乏しく、大変厳しい山梨県の財政状況に鑑みると、県民にとって極めて重要な県民共有財産である山梨県の地下水から受益する者に対して、山梨県が課税することは自然である。
 一方、長崎知事は、県有地貸出問題等で県収入の増大に対し積極的である。にもかかわらず、県の検討会が示した報告書は、「その性質上、法定外税の導入の是非といった政治的な判断を必要とする論点について、検討することを目的としないことは言うまでもない」とし、地下水課税において積極的な姿勢が見られない。
 地下水課税の最終的な担税者は各地の消費者であり、その多くは、県外の消費者と見込まれる。地下水課税の仕組みは、長崎知事のいう「世界の富を山梨に集める」方向性に沿うのではないか。
 また、地下水課税は、県議会が可決した提言であり、いわば「県民の代表」の示した方向性である。いわゆる専門家の提言とは性質が異なる。
 もちろん県議会の提言に従って直ちに地下水課税を開始せよ、ということは、昨今の物価上昇が消費者に与える影響等を考えれば困難であろう。しかし、新たな税制を設けるには慎重な検討が必要であり、実施には多くの時間を要することからすれば、制度化は早急に取り組むべきである。
 長崎知事自らが示した方向性にも沿っているはずの県議会の提言を消極的に扱う姿勢は、とても評価できるものではない。

長崎県政 検証1-⑤ (富士山登山鉄道)

 外に打って出る選挙公約「富士登山鉄道」については、長崎知事就任後、県議会令和元年度6月補正予算に富士山登山鉄道検討費4,175万9千円を計上し、同年7月29日第1回理事会開催以降、理事5回、総会2回を開催し、令和3年2月に「富士山登山鉄道構想(案)」を取りまとめられた。
 同構想取りまとめのプロセスを見ると、富士山世界文化遺産学術委員会(委員長・遠山敦子元文部科学大臣)との連携、地元との丁寧な説明という観点から、決して的確なコンセンサスを得られる努力を行ってこなかったことが窺える。
 長崎知事は、知事選に向けた課題として、山日新聞の立候補予定者4氏徹底インタビューの中で、富士登山鉄道の整備検討について

「最大の目的は県、地域へのプラスの波及効果だ。この大原則の下で地域とコミュニケーションを取って理解してもらいたい。…県庁の役人による庁内検討とはレベルと次元が違う発想でやっている。ここが後藤県政との違いかもしれない」

参考:山梨日日新聞
2019年1月1日付「立候補予定者4氏徹底インタビュー」(特集/007)

 としているが、長崎知事が「県庁の役人による庁内検討とはレベルと次元が違う発想」と得意げに語る本件「富士山登山鉄道構想」は、検討当初はもとより、令和3年2月に構想案を策定して初めて地元への説明を試みたが、地元への丁寧な説明についての努力が全く認められず、結果、1年以上も進捗が見られない。地元としては、基本構想の本質的な部分を疑問視する声が多い。結果、地元をはじめとして、県民に受け入れられる的確な検討プロセスにはなっていない。
 また、令和3年度予算に計上した登山鉄道の基本構想である「富士山LRT(※)事業化検討委員会」が、これまで開催され具体化された形跡が全く認められない(公表されない)等、中途半端な取り組みに止まっており、全く評価できる状況にない。

(※)LRTとは、Light Rail Transitの略で、低床式車両(LRV)の活用や軌道・電停の改良による乗降の容易性、定時性、速達性、快適性などの面で優れた特徴を有する軌道系交通システム(国土交通省)。

1.富士山登山鉄道構想検討会理事会及び総会開催状況

(1)理事会・総会開催日程

 富士山登山鉄道構想検討会理事会は、第1回、令和元年7月29日東京・都道府県会館、第2回、令和元年9月12日東京・アルカディア市ヶ谷、第3回、令和元年12月17日東京TPKガーデンシティPREMIUM神保町、第4回、令和2年1月30日東京・参議院議員会館、第5回、令和2年12月2日東京・参議院議員会館と計5回開催されている。
 富士山登山鉄道構想検討会総会は、第1回、令和2年2月6日東京・参議院議員会館、第2回、令和3年2月8日東京・参議院議員会館と計2回開催されている。
 この第2回総会において、「富士山登山鉄道構想(案)」を原案通り決定した。

(2)度重なるユネスコ(※)への対応意見

 理事会には、松浦晃一郎第8代ユネスコ事務局長・元駐仏大使及び小田全宏認定NPO法人富士山世界遺産国民会議運営委員長もメンバーに入っており、各理事会では、以下のようにユネスコへの綿密な報告の必要性を指摘されている。

(※)国際連合教育科学文化機関

 (第1回理事会)
 「世界遺産としての基本的考え方を踏まえ、富士山の景観を損なわないよう、基本的展望をしっかり考えて欲しい」「文化庁と調整し、ユネスコとも連絡を取って欲しい」

 (第2回理事会)
 「安全確保のための技術的な対応策と、それを実施することで環境維持やユネスコの理解が得られるかがハードル」

 (第4回理事会)
 「完全に固まり、変更できなくなってから世界遺産センター(ユネスコの世界遺産委員会事務局)にアプローチすることはよくない。」
 「国内法令との関係や地元対応、提出資料の作成(日本語、英語)などが並行して進むので、まずは、世界遺産センターに、大体こういう方向で考えているという資料を提出し、その反応を見るのが第一歩」
 「ケーブルカーなどと違い、LRTなら世界遺産決議に違反することにはならないと思うが、場合によってはイコモス(※)に意見を聞き、世界遺産委員会の新たな決議が必要と判断される可能性もある。そうした段階、手順への対応が、ユネスコの理解を得るという意味」

(※)国際記念物遺跡会議

 (第5回理事会)
 「ユネスコ世界遺産センターの幹部に対して説明が必要。今年延期された世界遺産委員会が来年6月に中国・福州市で開かれるので、直接説明しては」等

(3)地元への説明・意見聴取に関する指摘

 地元への説明・意見聴取の実施と理解を得る必要性についてもたびたび指摘されている。

 (第3回理事会)
 「世界遺産で大きなプロジェクトが具体化すると、反対する人がユネスコに投書するなどして問題が大きくなることがある。大半の人が納得するよう地元には丁寧に説明する必要がある」
「登山鉄道は、地元の皆様から祝福されることが必要」
「地元が納得して賛成するプロセス、情報提供が重要であり、詳しい専門家に意見を聴きながら進めるべき」

 (第5回理事会)
 「地元の反応は?」との質問に対して、「地元からは納得していただけそうだという手ごたえはあるが、本格的な説明はこれから。総会を経て方向性が定まった段階で、再度この事業の持つ意味などについて、しっかりとコミュニケーションを取りながら、最終的に了解を得たい」と回答。

 (第2回総会)
 「構想案には地元対策が出ていないが、別に考えるのか」との質問に対し「これまでは登山鉄道という言葉だけで、具体案がなかった。この構想を基に、地元と正式に相談していく。五合目やその上の関係者の皆様やふもとの皆様に対して、地域の高付加価値化の方策や鉄道の在り方などについてしっかり話をしていく」と回答。

2.富士山世界文化遺産学術委員会との関係

(1)長崎知事の認識

 令和元年10月28日、知事記者会見で長崎知事は、記者から、

 「先日の世界遺産の学術委員会で、遠山委員長が、富士山は山梨県だけのものではないという言い方で、関係機関と相談しながらやってほしいと。静岡県も含めてだと思いますけれども、山梨県としては当然相談しながらやっていくということだと思うのですが」
との質問に対して、
 「もともと国家プロジェクトという位置づけですので、山梨県のためだけの富士山登山鉄道構想だと思っていません。山梨だけのものでもないし、静岡だけのものでもないし、むしろ世界遺産だということは、人類全体のものですので、そういう意味で、相談すべきところとは、しっかり相談をしていきたいと思います」

 と説明した。
 また、長崎県知事は、「富士山登山鉄道構想」策定より1年前の令和2年2月7日の知事記者会見において、記者から、

 「富士山世界文化遺産学術委員会として、登山鉄道について議論するということについてご感想をおねがいします」
 との問いかけに対して、
 「今朝、各紙報道を読ませていただきましたが、例えば学術委員会の遠山委員長は登山鉄道への国際的な反対が出てからでは遅く、良い面と悪い面をまとめ、解決策を検討すべきだということでした。前向きとまではいかないまでも、学術委員会として適切なアドバイスを考えましょうということだと理解をしているところですので、まずどういう問題意識が我々にはあるのか、その解決策としてどのようなことを検討してきたのか、なぜスバルラインをLRT、路面電車を通す案がいいのか、それによってどういうプラスの面があって、或いは課題は何かということを、検討会で行ったのと同じような密度で、しっかりご説明をして意見交換をしていきたいと思います。ちょっと言葉が激しかったようなところもあるのかも知れませんが、中身やおっしゃった言葉の背景からうかがえる問題意識を見ると、必ずしも我々と乖離しているものではなくて、むしろ同じような問題意識を持っているなということが分かりましたので、丁寧にじっくりと対応していきたいと思います」
と説明した。さらに記者から、
 「これまで知事が地元の人たちと議論をしながら、最終的に建設するのかどうかの決断を結び付けていきたいとおっしゃってきましたが、地元という中には、学術委員会は含めたいという意向なのでしょいうか。それとも地元の北麓の地域の人たちと話をしていくということでしょうか」
と質問されたことに対し知事は、
 「基本は北麓、それから県、という形で対話を広げていって、骨組みだけですので、このようなことに気を付けなければならないとかこのようにするべきだとか、そのようなご意見にしっかりと盛り込んで肉付けをしていく作業というのが最初だと思います。そのうえで随時、まずその小委員会、或いは学術委員会に対しましては、コミュニケーションをとりながら、その肉付けしていったものを、随時お話をしていきたいと思います。その上である程度、県内でイメージが固まってくれば、正式に、富士山世界文化遺産協議会にお諮りをして、議論をして、アドバイスをさらに頂いていくという段取りを現在イメージしています」
 と説明した。
(2)富士山世界文化遺産学術委員会等の対応

 富士山世界文化遺産学術委員会は、令和3年2月4日付で「富士山登山鉄道構想」の検討会に対する提言をまとめた。
 提言では、構想の計画段階から世界遺産への影響評価を始めるべきだと指摘し、委員会の示した枠組みに基づき、構想の各段階で山梨県や事業運営者が影響評価を実施するよう求めている。具体的には、富士山の持つ顕著な普遍的価値を損なうものでないことが明確で、かつ、富士山の抱える課題を解決する可能性があると承認された場合、事業の初期段階で遺産影響評価を実施することを求めている。
 また、検討会への提言送付後に公表された「富士山登山鉄道構想」について、富士山世界文化遺産学術委員会の遠山委員長は、令和3年2月26日の委員会で以下の様にコメントしている。

「まずスタートについたということである。この事業は富士山が世界遺産になって初めての大掛かりな事業である。従ってきちんとした形で進めていく必要がある」 「今後、学術委員会としては本件について、山梨県から説明のあった目的を達成するためにLRTでいいのか、あるいはもっと他の方法もあるのかも含めて、本格的に議論し、山梨県側の構想の進め方と歩調を合わせながら、学術委員会としてのしっかりした取組を続けて行きたいと思う」「第1回の構想についてのHIA(※)を行われる山梨県については慎重に案件を進めていただきたい」  (※)健康影響評価

 さらに、委員会の対応や「富士山登山鉄道構想」の進捗が報告された令和4年3月29日の富士山世界文化遺産協議会でも「「富士山登山鉄道構想」に関しては、引き続き地元への説明や意見聴取を行っていただきたい」との意見が示され、「まずは評価の前提となる現状や課題などを整理する必要があるとの意見が示されたことから、当面それらの作業を地元対話と並行して進める」こととされている。
 この「富士山登山鉄道構想」は、富士山世界文化遺産協議会や富士山世界文化遺産学術委員会の重大な関心事項となっており、まだスタート段階であり、慎重に進めるべきものと扱われている。

3.地元への説明・意見聴取が不十分

 この問題に対する地元への説明・意見聴取については、上記のとおり、富士山登山鉄道構想検討会理事会及び総会において、その重要性が繰り返し指摘されている。
 この点について、令和2年12月2日開催された第5回理事会において、出席委員から地元とのコミュニケーションについて「地元の反応は」と問われ、長崎知事は、

 「地元からは納得していただけそうだという手ごたえはあるが、本格的な説明はこれから。総会を経て方向性が定まった段階で、再度この事業の持つ意味などについて、しっかりとコミュニケーションを取りながら、最終的に了解を得たい」

 と説明している。
 「富士山登山鉄道構想」が公表された翌日である令和3年2月9日付「山梨日日新聞」によると、富士北麓首長の反応として

 渡辺喜久男富士河口湖町長
 「1万円という料金で、果たして年間300万人が利用するのだろうか」との疑問を投げかけた。

 小林優鳴沢村長
 「利用客が減るかもしれない。静岡県側に観光客が流れる可能性があり、料金設定を精査する必要があるのではないか」と話した。

 堀内茂富士吉田市長
 県が想定した整備費について「このほかに落石など自然災害に対処する周辺整備のコストも必要になる」と、費用が増大する可能性を指摘。富士山の環境保全にはマイカー規制の強化などの対策を進めるべきだとして、富士山登山鉄道構想自体に否定的な考えを示した。「富士山を守り続けてきた地元住民の理解なく、構想を具体化することは好ましくない」と釘を刺した。

 地元3市町村長(小林村長が代表して)
 「(登山鉄道が)実現可能かどうかの話をしている段階だと考えている」として住民への十分な説明を求めている。
 等とする記事を掲載した。

 また、令和3年5月21日、地元富士五湖観光連盟の堀内会長は、同連盟の総会で
 「方向性は誤っている」
 として、その理由について、

  • 排ガスを出さない電気バスの技術革新が進みLRTに優位性がない
  • スバルラインは雪崩などの災害リスクが増している
  • 想定されている運賃が高額で限られた人しか利用できない

 などを挙げ、「構想は私たちが目指す『多くの方々に広く愛していただく富士山観光』に逆行している。かえって富士五湖観光全体に悪影響を及ぼす」と明確に指摘した。
 このような地元の反応は、これまで長崎知事が、「富士山登山鉄道構想」について、地元に対して一切説明・意見聴取をしてこなかったという証左である。再三地元への説明の重要性を指摘した富士山登山鉄道構想検討会等における委員からの質問に対して「地元からは納得していただけそうだという手ごたえはある」とした長崎知事の返答には、いかなる根拠があったのか。もし、単なる長崎知事自身の個人的な感想が根拠であるならば、検討会等の指摘に真摯な回答をしたとはとても言えず、長崎知事のいい加減な対応は許されず、責任は極めて重い。
 なお、県は、令和3年4月以降、県民の要請に応じる形で10~15人規模の個別説明会を複数回開催し、5月26日に富士吉田市内で公開討論会を開催する予定でいたが、同討論会は1年以上もたって現在まで開催されておらず、地元との協議は平行線が続いている。

4. 富士山LRT事業化検討委員会も停滞

 県は、令和3年度当初予算に富士山登山鉄道検討費228万円を計上し、「富士山登山鉄道構想」の具体化に向けて、官民の役割分担や事業のスキーム等を検討し、予算の事業内容として検討委員会の開催を掲げていたが、同年度2月補正予算で、同額の減額補正を行った。この結果、令和3年度は、同事業について、全く取り組まなかったことが明らかとなった。
 コロナの感染状況の中でも、公約の推進という意味では、リモートによる検討会等方法はいくらでもあるが、上記の地元対策と同様、その熱意は全く感じられない。
 令和4年度当初予算にも同様の予算が計上されたが、同検討委員会が開催されたという事実は確認できない。

5. スバルラインにおけるスラッシュ雪崩の発生

 富士山有料道路において、令和3年3月22日、道路管理者の調査により、富士山5合目ロータリーから約1キロ下った石楠花橋の橋げたが橋台から30センチ程度ずれ、道路面よりも5センチほど浮き上がった被害が確認された。このほか橋桁に幅1~2ミリ程度の亀裂が複数個所確認された。さらに4~5合目で道路4か所が土砂で埋まり、御庭同門、青草洞門、苔桃橋にも被害が確認されている。
 これについて山梨県は、3月21日午前5時~午後8時に324ミリの降雨を観測している。雨で積雪が解けてスラッシュ雪崩が発生したとみている。
(山梨日日新聞令和3年4月8日付)

 山梨県は、ゴールデンウィーク前の開通を目指しう回路を整備するとして、結果、4月27日に石楠花橋を迂回する仮設道路を設置完了し、4月28日午前6時から開通することとなった。
 令和2年12月に示された県土整備部の調査によると、スバルラインでは4~5合目の14か所で雪崩の到達が予測されるとし、うち5か所は洞門や橋などで対策済みとしており、今回被害が発生したしたのも予測されたエリアだった。対策済みとされた石楠花橋でも今回大きな被害が発生したように、雪代の威力により、対策も必ずしも万全でないことが示されることとなった。
(山梨日日新聞令和3年4月21日付・論説)

 堀内富士吉田市長が、山日新聞の取材に対し、「想定した整備費について『このほかに落石など自然災害に対処する周辺整備のコストも必要になる』と、費用が増大する可能性を指摘した」と報じられている。
(山梨日日新聞令和3年2月9日付)

 スバルラインにおいて、正に堀内富士吉田市長の指摘を裏付ける冬季における自然災害が発生したことになる。
 仮に、こうした自然災害を克服するための大規模な予算措置が可能であったとしても、大規模防災工事による環境負荷(破壊)と景観破壊は、富士山世界文化遺産学術委員会が令和3年2月4日付の「富士山登山鉄道構想」の検討会に対する提言で示した指摘をクリアーすることは、極めて困難であると考えられる。
 厳冬期の富士山5合目付近は、天候も急激に変化し突然の極めて厳しい風雪の可能性もあり、この場合に、乗客の安全対策、救出に万全の対策を講じることができるのか、安全対策の面でも不安が残る。

6. 参考

 なお、「富士山登山鉄道構想」を含む富士山登山鉄道の検討については、村串仁三郎法政大学名誉教授により「山梨県の富士山鉄道構想についての批判的考察」(法政大学経済学部学会出版「経済志林」88巻4号)としてまとめられている。

長崎県政 検証1-⑥ (人口減対策・男女共同参画社会実現)

 山梨県が抱えている深刻な課題の一つは出生数の減少である。1995年に8,833人生まれていたこどもが2020年には5,184人になり、3,649人減少。その出生数減少率を見てみると全国平均が▲29%に対し、山梨県の出生数減少率は▲41%で全国9位と非常に深刻な状況であることがわかる。一方、少子化政策で指標とされがちな合計特殊出生率は全国平均が1,36に対して山梨県は1,5の全国13位であり、少子化対策が進んでいるように思えるがこれは間違いである。以下にその理由を挙げる。

1.女性の県外への転出

 ニッセイ基礎研究所レポートでは、以下のように説明されている。
 「出生率は女性人口の人流の影響を受ける。就職期をメインに若い独身女性がエリア外へ転出超過にある状況で出生率は上がる。中山間地域など過疎地域ほど出生率が高い傾向にあるが、未婚女性が就職等でエリアから多く出ていくことで、分母の未婚割合が圧縮される影響が大きいというトリックに気づかねばならない。出生数の増減は女性の転出超過数と高い相関関係がある。しかし、現状は「県内に残っている女性かつ既婚者への支援」政策に固執しており、若い女性の県外流出に対する危機感のなさ、鈍感さがある。妊活・子育て支援等の既婚者政策は、全て「地元に残る女性を対象」とした政策である。若年未婚女性の流出による出生数減少の大きさを軽視する政策のベースには「エリアの持つ古い家族・労働価値観を頑なに変えない」「地元に残らない人は視野に入れない」社会風土が感じられる。統計的に見れば若い女性が去りゆくトレンドのエリアに人口増加の未来はない。
 若い女性の県外流出は将来の母親候補を失うだけでなく、地元の男性の未婚化を加速化させる(日本の男性は、50歳時点での結婚歴なし割合が4人に1人に達している)。
 そこで必要なのは、「若い女性が地元に残りたいと思える県政運営」である。

2.女性の社会参画を軽視する長崎県政の姿勢(ぴゅあ富士・ぴゅあ峡南集約)

 そもそも、日本は、世界的に見ても男女共同参画社会実現の取組が遅れている。例えば、世界経済フォーラムが公表した「The Grobal Gap Report2022」(2022年7月)では、日本の総合スコアは146ヶ国中116位と先進国の中で最低レベルであり、アジア諸国でも韓国、中国、ASEAN諸国より低い結果である。
 その日本の中において、山梨県は残念ながら政治的分野での女性活躍は全国最下位。学校長や管理職の女性割合も最低レベル。女性が活躍しにくい県と言っても過言ではなく、山梨県は女性の社会進出が遅れていると言われている。女性の社会進出は、山梨県における喫緊の課題である。
 このような状況の中、県は突然、ぴゅあ峡南、ぴゅあ富士を廃止し、ぴゅあ総合への集約を発表した。
 ぴゅあ富士は平成2年、ぴゅあ峡南は平成8年度からそれぞれの地域における男女共同参画活動の中核を担ってきた施設であり、施設の集約という県の方針をうけて、女性団体から多くの存続を求める署名が集められた。
 廃止とする理由の一つとして県は利用率の低下を挙げている。しかし、利用率が低下した原因は、委託業者の怠慢との指摘もあり、先ずは委託業者の業務改善に向けた取り組みが先決であろう。いきなりの廃止は性急である。
県は男女共同参画センターに関する意見交換会を実施したが、集約という方針を変更しないことを前提とした「ガス抜き」のための意見交換に過ぎなかったのではないか。集約に対する反対意見に耳を傾け、県の政策に反映させようという姿勢はまったく感じられない。
 県議会も多くの声を受け、令和3年2月定例会において男女共同参画推進センターの集約方針の見直しを求める請願を採択、可決した。
 県議会が可決した請願を無視し、廃止集約を決めたことは二元代表の一翼を担い、県民の声を代弁する議会軽視と言わざるを得ない。
 長年の積み重ねにより一歩ずつ進展してきた男女共同参画を後退させることなく、さらに前に推し進めていくためには、活動の拠点と専門人材の確保が重要である。
 そもそも、過去に報じられた言動が男女共同参画の理念に沿わないのではないかとの疑念を持たれるような長崎知事のこのような方針は、女性軽視と言わざるを得ない上に、山梨県の男女共同参画の取り組みが消極的であると他都道府県に強く印象付けたと評価せざるを得ない。

3.県民よりも自己PRを優先する長崎知事の姿勢

 長崎知事は、性別による社会格差を徹底解消する「男女共同参画先進県」実現に向けて「取り組み断行宣言」を表明した。しかしその内容は、男女共同参画推進センターの廃止及び統合を正当化するための言い訳に終始している。そして、宣言の中で「無駄は改めるが男女共同参画推進予算は削減しない。必要に応じて予算の積み増しを行う」と大変消極的な予算しか表明していない。
 男女共同参画全国最低レベルの山梨県を「先進県」に引き上げると「取り組み断行宣言」をしておきながら、予算を増やさないと言っている姿勢は、パフォーマンスに過ぎないと言える。
 パフォーマンスと言えば、長崎知事は議会にもかけずに突然、山梨県庁内に託児所を設置した。この運営費は男女共同参画推進センターの運営費に近いが、こうした思いつきの予算執行を許してはいけない。さらに言えば、山梨県が発行している広報紙の表紙や記事に多くの知事の写真が使われていることは県民よりも自分をPRしたい長崎知事のパフォーマンスの代表的なものだと言える。
 また、山梨県の男女共同参画推進事業の一つに「ジェンダー平等ワーキング事業」が開催されたが、複数の参加者から「毎回充実した内容で大変勉強になったが、まとめに入る頃、みんなの意見を県の考えに誘導するような姿勢が見られて非常に腹立たしく残念だった」との声が届いている。参加者とくに若い女性の声を積極的に活用する姿勢が欠けているのは長崎県政の反省するべき点だと強く指摘する。

4.評価

 後藤前知事の県政では女性の副知事を置き、様々な式典やミーティングに女性副知事が出席しており、女性達から高い評価を得ていた。一方、長崎知事は女性副知事を置くなどの女性を大切にする姿勢を見せないどころか、不倫や性風俗に関わる報道が報じられ、女性蔑視などのマイナスイメージを県民に与えている。
 パフォーマンスではなく、本気で男女共同参画推進に取り組み、若い女性達が県外流出しない県にしなければ山梨県の出生数は今後も減り続け、さらなる人口減をもたらし、持続可能な地域づくりは望めなくなる。

長崎県政 検証1-⑦ (県委託事業の契約)

1. 随意契約が多数実施されている問題

 県における発注業務については、総務省資料によれば「地方公共団体が発注を行う場合には、不特定多数の参加者を募る調達方法である『一般競争入札』が原則とされています。一方、この原則を貫くと調達の準備に多くの作業や時間が必要となり、結果として当初の目的が達成できなくなるなどの弊害が生じることがあり得ます。このため、『指名競争入札』や『随意契約』による調達が例外的な取り扱いとして認められています」とされ、随意契約を結ぶ場合は、例外的な場合に限られるとしています。

(1)プロポーザル方式による場合を含む随意契約の的確な運用が必要

 県が実施する事業について、農産物関連プロモーション事業、観光関連事業、二拠点関連事業等に区分して、随意契約(プロポーザル(業務の内容が技術的に高度なもの又は専門的な技術が要求されるものについて、技術提案書(プロポーザル)の提出を求め、技術的に最適な者を特定する手続)を含む)のものをまとめるとともに、同一事業所に多数の事業を委託しているものについてまとめたところ、随意契約(プロポーザルを含む)が極めて多いことが判明。
 財務規則で規定する額を超えて随意契約を行うことについては、状況に応じて必ずしも違法とは言えないが、同一事業所と多数の随意契約を結ぶことになれば定められた随意契約の上限を潜脱する意図を疑われることにもなりかねず、慎重な実施が必要である。
 また、プロポーザル方式については、公平性、透明性、客観性を確保するために、技術提案書に対する明確な特定基準を作成することや設計者の提案を適切な体制で審査することが必要であり、客観的な第三者がその事業者選定に関し重要な位置を占めるようにしなければならない。恣意的な選定を排して的確な選定を行っていることを県民に示すためにも、県議会が選定された者の適格性を検証できるよう、各事業について、選定委員を公表させてその客観性を説明すべきと考えられる。

(2)重複する事業内容になっていないか

 当然であるが、県が発注するどの事業も血税により執行されている。県が発注する事業は、効率的なものとされなければならない。
 県が委託するプロモーション事業について見ると、県の農産物をはじめ特産品については、重複するものが多いと考えられる。プロモーションの基礎とすべきコンテンツについては、多方面に活用可能なものが多いと判断されるため、事業の取捨選択と統合により経費の抑制を図るべきと判断される。
 また、新型コロナウイルス感染症が世界的にまん延する中で、例えば、2020年7月10日に1,658万300円で株式会社ATOMと契約した「戦略的海外プロモーション業務」、同年8月24日に同社と1,980万円で契約した「地域プロモーション戦略策定等支援業務」、2021年5月10日に同社と3,586万円で契約した「戦略的輸出拡大事業」、同年7月12日に同社と5,832万2千円で契約した「地域プロモーション戦略推進支援業務」、2022年4月18日に同社と4,411万円で契約した「農産物戦略的輸出拡大事業」、さらには、契約事業者は不明であるものの、「地域ブランド価値向上業務」(5,025万1,300円)については、海外において同種の市場調査や販路開拓の取り組みを行う事業と認められるが、コロナ禍において、毎年、同様の調査や現地に行かずしての各種取り組みが、どの程度効果を見込めるものであるのか、これらの事業について綿密な検証が必要である。

2. 県の事業契約の迅速な公表

(1)感染症対策グループの契約結果掲載の遅れ

 2021年度6月、9月及び11月の補正予算、2022年度当初予算、同年度6月補正予算には、感染症対策グループの莫大な予算が計上されている。
 県のホームページの「県政情報・統計」の「入札・契約結果の公表」の「随意契約結果(委託等・本庁)」には、感染症対策企画グループとして、令和4年度感染症知識普及啓発事業委託契約(1,100万円)のみが掲載されているだけである。一方で、入札結果(委託等・本庁)欄には、感染症対策グループの所属記載さえない。
 そもそも、感染症対策グループが委託した事業が随意契約による委託契約以外にないということか。他の契約がある場合には、なぜホームページに掲載されていないのか確認・検証する必要がある。

(2)事業選定結果がリアルタイムに公表されない

 例えば「地域ブランド価値向上業務委託」(5,025万1,300円)については、企画提案の際、7月15日に最終審査結果通知としながら、9月5日現在県のホームページには選定事業者が公表されていない。さらに、「やまなし二拠点居住推進プロモーション事業業務委託」(678万7千円)及び「やまなし二拠点居住オウンドメディア構築等業務」(1,180万円)についても、企画提案の際、それぞれ、6月13日と7月6日に結果通知としていながら、9月5日現在県のホームページには選定事業者が公表されていない。これまでにも、上記と同様な状況が散見されている。
 また、選定結果が、企画提案の項目に明確に表示されるものと、されないものがある。
 上記のとおり、特に随意契約が多数行われる実態を踏まえ、県議会としても予算執行の状況をリアルタイムに、かつ、正確に把握する必要がある。また、県議会議員に限らず、県民が誰でも容易に県が執行する事業の契約状況を正確に把握できるシステムとするよう改善が必要である。

長崎県政 検証2 (政治姿勢)

 2019年1月27日に執行された山梨県知事選挙は、私たちが推薦して再選を目指した後藤斎氏は、自民党が推薦した長崎幸太郎氏に敗れ自民党籍を持つ知事が誕生した。
 長崎知事のこれまでの政治姿勢について、県民の立場から検証を進める。

1.知事記者会見(2019年2月18日)より抜粋

 自民党籍を残したから行政が歪むとは全く思っていません。行政を公平、中立、公正にやるのは当たり前の話で、そこに党勢拡大の思惑で変なことをするということはありません。今日ここに至る前に、県議会の各会派の皆さんのところにご挨拶に伺いました。当然、自民党でない県議会議員の先生方にもコミュニケーションを密にしましょうという話を差し上げて、ぜひそうしましょうというお話をいただきました。私の県政運営において、先ほど申し上げた山梨を良くするということが、単純ではありますが大目標ですので、アイデアやお知恵、お考えがあれば、幅広くいただきたいと思いますし、いただく中で虚心坦懐に議論させていただき、良い意見であればどんどん取り入れていくというスタンスは持っていきたいと思っています。

2.知事記者会見(2022年8月23日)より抜粋

 ぜひ検証をしていただきたいと思います。私もこれまで議会において、未来やまなしさんから、いただいた提言、質問、あるいは質問のみならず議会での意見交換の場でご指摘いただいたことは、ほぼ100%受け止めて、その実現に向けて取り組み、そして成果を上げていると。これは私は断言できると思います。検証していただければ、そのことも世の中に明らかになるでしょうし、また何よりも議員の先生方が一番そのことはよくご理解いただいているのではないかなと思っています。
 私どもは、質問をいただき、その答弁を考えるわけですけども、我々のやり方はいただいた質問をもとに、実際、事務方が答弁案というのを作り、それを議論しながら行くわけですが、基本的に先生方の問題意識をもとに、少なくとも建設的なものは、ほぼすべて、それをいただき実際の政策変更まで、多々行っております。これが大体いつも、すべての県議会の質問に対して同様のことが起こるわけですけれども、そういう形でよく「二元代表制」というお話をいただきますが、私としては、県議会の先生方から質問という形でいただいたものについては、最大限の敬意を払い、その問題意識の理解に努め、取り入れるものは最大限取り入れておりますし、また、その時点で取り上げられなかったものについても、時間を置いて環境が整ったところでまた再チャレンジをするということをやっております。
 これは御社の新聞記事によりますと、立憲の代表の方が、私は一党一派に偏らない県政姿勢を就任時に表明しつつも、ここまでは県政の話ですね、そのあと昨年の衆院選云々っていうのはこれは国政の話、県政の話と国政の話をごっちゃにして議論するというのはちょっとどうなのかなと。すごく世の中に対するミスリーディングになるのではないかなと思います。
県政に関しましては、今申し上げましたとおり、すべての会派の皆さんの意見を真正面から受け止めて、それを取り入れて、議会との本当に共同作品なのが、ある意味、私の県政の1つの特色じゃないかなといえるぐらいだと思っております。
 国政に関しては、これはまた県政とは別の問題でありまして、私が誰を支援しようと、それは私も自由であって、これを何かどうか言われるのはいかがなものか。県政に偏りがあるというのであれば話が別だとは思いますが、そうではなくて県政は今申し上げたとおりです。県政はまさに全ての会派の皆さんの素晴らしい意見を取り入れて形作ってるわけであって、それをやっている以上は、国政で誰を応援しても、それは私の政治的な自由であって、これが駄目だというのは基本的人権の侵害だろうと思います。

 以上の長崎知事の発言を踏まえつつ、山梨県知事という県民を代表する公人の立場であることから以下の政治姿勢を指摘する。

3.各会派からの意見反映

 県民から選ばれた県議会議員の意見は県民の意見であり、わが党所属の会派のみならず幅広く各会派の意見を県政に反映することは当然のことである。
 各会派の意見等に真摯に耳を傾け、一党一派に偏らない県政運営や知事の謙虚な姿勢が県民から強く求められていることを改めて指摘せざるを得ない。

4.県政と国政の関係

 県政と国政は、私たち県民にとっても密接な関係にある。この密接な関係は、政党によって一層緊密さを増している。国政選挙は国家レベルの政策等を争点として判断され、県民も国民として政党及び候補者を選択するものである。
 今回の参議院選挙においても、わが党の候補者に多くの県民のご支持をいただいた。その声を県政と国政に反映させることは私たちの使命である。
 長崎知事が言うように、国政と県政を切り離して論ずることは、政党という集団が国政と県政にまたがって存在する以上、容易ではない。
 県知事という立場にありながら、特定の党の党籍を有することは、県政をその党の方針に従って運営することを表明していると指摘されても仕方がない。そうなれば、他党を支持する多くの県民は、自らの意見が無視されるのではないかとの危惧を抱くことは当然である。長崎知事は、一党一派に偏った知事の姿勢を非難する多くの県民の声を率直に受け止めるべきである。

5.国政選挙における知事の政治姿勢
長崎知事は、国政選挙において、自民党候補者の選対役員に名を連ね、本年7月の参議院議員選挙では、候補者の引き回しや選挙応援、さらには「山梨県知事長崎幸太郎」名による2連ポスターを街頭に数多く掲出に入るなど、結果として特定の党の党勢拡大に寄与する行動をとっていた。自民党でなければ県民にあたらずの振る舞いは、県民の代表である知事の政治姿勢として県民の理解は得られず、私たち県民としてとうてい容認できるものではない。 日本国憲法で保障されている国民の権利は十分に理解しつつも、長崎知事は公人であり、山梨県知事として一党一派に偏らない政治姿勢を多くの県民が求めていることを謙虚に受け止め、今後は姿勢を改めるべきである。 以上の検証から、県知事として県議会会派の意見を聞くという当然の役割をあたかも自らが属さない政党の意見を取り入れているかのように開き直る長崎知事の県政運営の姿勢や、国政選挙における特定候補者・特定政党支持の長崎知事の行動はとうてい容認できるものではない。

以上

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